Managing Director & Senior Partner
Sydney
世界の電力会社の多くは、需要の停滞・低迷、設備の建設・更新への投資、コスト削減を迫る規制当局からの圧力、分散型電源の導入拡大など、一連の課題により収益を圧迫されています。課題一つひとつが、電力会社にビジネスモデルとコスト体系の見直しを迫るものだと言えますが、これらが重なり合うことにより、世界中の送配電事業者にとって戦略とオペレーションの変革は喫緊の課題となっています。
新たな発電手法、デジタル技術、変化しつつある消費パターン、そして新たな市場機会により、オペレーションの複雑性が高まっています。送配電事業に大きな影響を与えるとともに、変革に向けた大きな機会をもたらす8つの破壊的なトレンドをご紹介します。
将来における集中型電力システムのあり方に大きな影響を与える市場の抜本的な変化や、規制変化のスピードは市場により異なり、企業にリスクと不確実性をもたらしています。
この不確実性により送電事業の戦略策定は困難になっていますが、戦略を見直す猶予はまだあります。次の問いに答えることが、送電事業の先進化に向けての道筋を定める出発点となります。
現場担当者のためのシミュレーターからドローンを活用したメンテナンス、AI(人工知能)によるサポート機能に至るまで、将来のオペレーションは、現在とは大きく異なるものになるでしょう。各市場の個別の状況にかかわらず、デジタルによる保守管理や、送電網が自動的に問題を検知・分離することで顧客への影響を最小限におさえる「自己回復」技術などが、送電網インフラに組み込まれることは確実です。
しかし、デジタルトランスフォーメーションは、単なる設備投資やテクノロジーにおける変革ではありません。組織構造や人々の働き方にも深く関連しています。送電網についての統合的な計画の策定は、データアナリティクスを活用した、より迅速でより臨機応変な意思決定プロセスを通じて行う必要があります。
デジタル化のインパクトを最大化する
送配電事業者は、すでに従来型のコスト削減の施策を導入し、無駄のないリーンプロセスを導入しています。次の変革の波は、組織構造と業務プロセスを対象としたものになるでしょう。その際、業務に関する技術とプロセスを緊密に結びつけることで、最も大きな価値を創出できると考えられます。
電力・ガス業界の企業を変革するには、以下の要素が必要です。
最大の価値を引き出すために、体系だったアプローチで将来の計画を立てることが求められます。ビジョンが明らかになったら、具体的なトランスフォーメーション計画を策定する必要があります。計画に基づいてトランスフォーメーションを実行することにより、長期的価値を実現することができます。
国際エネルギー機関(IEA)によると、 次世代送電網構築への取り組みには、2030年までに3,000億ドルの投資が必要になります。
電力ネットワークにベストプラクティスを適用すると、コストを全体として15%~20%削減できます。
従業員の作業をデジタル化することにより、企業は現場で働く人員を50%増やし、作業の所要時間を25%削減できます。作業の質が向上することで、無駄な作業は30%減少します。
高度なアナリティクスによるメンテナンスの最適化と、個別の設備を対象とする故障個所の事前予測モデルの開発により、事業者が削減可能な運営費は25%におよびます。
アナリティクスとビッグデータにより、植栽の管理を最適化し、送電網の信頼性を阻害することなくの植栽剪定の間隔を平均20%程度延長することができます。
BCGの世界各地のエキスパートは、これまで何百ものトランスフォーメーションを支援してきました。世界各地の大手電力会社との協働を通じて、現在の厳しい事業環境で成功するためには何が必要かを深く理解しています。