BCG、企業の人工知能(AI)の導入状況に関する各国調査を発表

日本の「AIアクティブ・プレイヤー」の割合は、調査対象7カ国中で最も低い39% AIの導入を成功させるには、組織、カルチャー、プロセスの各側面における変革が重要に

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【参考資料】 

経営コンサルティングファームのボストン コンサルティング グループ(以下、BCG)は、2018年12月に、アメリカ、オーストリア、スイス、中国、ドイツ、日本、フランスの7カ国の企業を対象に実施した人工知能(AI)の導入状況に関する調査結果(以下、調査)をまとめたレポート「Mind the (AI) Gap: Leadership Makes the Difference」(以下、レポート)を発表しました。調査では、「一部の業務をAIに置き換えている 」ないしは「一部の業務でAIのパイロット運用を行っている」のいずれかに該当し、かつ自社のAI導入を「概ね成功している」と評価した企業を「AIアクティブ・プレイヤー」と定義し、AIアクティブ・プレイヤーの分析を通じて、AI導入における成功要因を組織、プロセス、カルチャーなどの側面から探っています。

AIアクティブ・プレイヤーの国別の割合は、中国が抜きん出て高く、他6カ国に大きな差はない 

調査対象国中AIアクティブ・プレイヤーの割合が最も高いのは中国(85%)で、次点のアメリカ(51%)以下を大きく引き離しました(図表1)。しかし、中国を除く6カ国の間では大きな差はみられませんでした。日本のAIアクティブ・プレイヤーの割合は調査国中最も低い39%にとどまりましたが、巻き返しは可能であるといえます。

AIアクティブ・プレイヤーの産業別割合―各国とも、テクノロジー/ メディア/ 通信で割合が高い傾向

主要産業別のAIアクティブ・プレイヤーの割合は、ほとんどの国でテクノロジー/ メディア/ 通信が最も高く、同産業の7カ国の平均は71%という結果となりましたが、その他の産業では国ごとに傾向が異なりました(図表2)。日本においては、テクノロジー/ メディア/ 通信(60%) と金融(42%)では7カ国平均との差は約10%ポイントにとどまったものの、その他の産業では、7カ国平均とは15%ポイントから最大29%ポイント差と大きく水をあけられています。消費者向け産業(35%)や産業財(32%)などにおいても、7カ国平均との差がそれぞれ15%ポイント、23%ポイントと相対的に低い水準にとどまっており、データが蓄積されている産業でも、AIの活用が進んでいない実態が浮き彫りとなりました。

AIの導入を成功させるための要因 - 「短いイノベーション・サイクル」「プロジェクトの早い段階でのパイロット運用開始」「クロスファンクショナルチームの活用」

レポートでは、AIアクティブ・プレイヤーの分析を踏まえて、AI導入の成功要因として「短いイノベーション・サイクル」「プロジェクトの早い段階でのパイロット運用開始」「クロスファンクショナルチームの活用」の3点を提示しています。

調査では、アイデア創出からプロトタイプ化に至る期間である「イノベーション・サイクル」が短い企業群ほどAIアクティブ・プレイヤーの割合が高いことが明らかになりました。AIアクティブ・プレイヤーの割合は、イノベーション・サイクルが7~10カ月の企業群では59.5%、4~6カ月の企業群では64%、1~3カ月の企業群では72%とイノベーション・サイクルが短いほど高くなります。日本の企業のイノベーション・サイクルは平均10.0カ月で、アメリカ(12.4カ月)よりは短いものの、中国(7.3カ月)と比較すると1.4倍の期間を要しています。

また、プロジェクトの早い段階でのパイロット運用を重視する企業群ほど、AIアクティブ・プレイヤーの割合が高いことも明らかになりました。パイロット運用を開始するのに望ましい時期について、「(詳細なインパクト分析を行わず)プロジェクトの早い段階」と回答した企業群のAIアクティブ・プレイヤーの割合は75%であり、「一部の部門やプロセスで効果があることが確認できた段階」(44%)「十分に効果があることが確認できた段階」(30%)と回答した企業群におけるこの割合を大きく上回りました。日本の企業で「(詳細なインパクト分析を行わず)プロジェクトの早い段階」でパイロット運用を始めると回答した企業の割合は12%にとどまり、中国の28%を下回りました。

さらに、AIアクティブ・プレイヤーは、部門横断的に組成される「クロスファンクショナルチーム」を通じてAI導入を進める傾向が強いことも明らかになりました。クロスファンクショナルチームを活用した企業の割合はAIアクティブ・プレイヤーでは41%であるのに対し、その他の企業は22%と2倍近いポイント差が出ました。従来型の単一の事業/ 機能部門の主導によるAI導入では、ノウハウや知見が「サイロ」内に埋もれてしまう恐れがあり、クロスファンクショナルチームの活用により関係する部門の積極的な関与を促進することが重要となります。クロスファンクショナルチームを活用した日本の企業の割合は29%と、中国の50%に対して低い水準にとどまりました。

BCG東京オフィスのパートナー、ロマン・ド・ロービエは次のようにコメントしています。「ここで述べた、短いイノベーション・サイクル、プロジェクトの早い段階でのパイロット運用開始、クロスファンクショナルチームの活用はいずれも経営層のコミットメントが必要な取り組みです。AI導入を成功に導くためには、経営層が主導し、変革を行っていくことが重要なのです」

調査概要

企業の人工知能(AI)の導入状況に関する各国調査。 

  • 調査対象国:アメリカ、オーストリア、スイス、中国、ドイツ、日本、フランス
  • 調査対象者:中小企業(従業員数250人未満)から大企業(従業員数50,000名超)まで幅広い企業の、AIに関する基礎的な理解を有する管理職
  • 調査手法: オンライン調査
  • 実施時期: 2018年9月~10月
  • 回答者数: 約2,700名

調査レポート

「Mind the (AI) Gap: Leadership Makes the Difference」

日本における担当者

ロマン・ド・ロービエ (Romain de Laubier) パートナー&マネージング・ディレクター
DigitalBCG Japanの共同リーダー。パリ・ドフィーヌ大学大学院、HEC経営大学院を修了。米ニューヨークの投資会社、BCGパリ・オフィスを経て、2019年1月BCG東京オフィスに着任。産業財企業を中心に、デジタル戦略立案・実行支援、デジタル・センターの立ち上げなどのプロジェクトを数多く手掛けている。

高部 陽平 パートナー&マネージング・ディレクター
DigitalBCG Japanの共同リーダー。デジタル&アナリティクスのジャパンリーダー。慶應義塾大学環境情報学部卒業。IBMビジネスコンサルティングサービス株式会社(旧プライスウォーターハウスクーパーズ)、BCGミュンヘン・オフィスを経て現在に至る。数多くのデジタル・トランスフォーメーション支援を手掛けている。

■ 本件に関するお問い合わせ

ボストン コンサルティング グループ マーケティング 直江・嶋津・國武
Tel: 03-5211-0600 / Fax: 03-5211-0333 / Mail: press.relations@bcg.com

ボストン コンサルティング グループ(BCG)

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日本では、1966年に世界第2の拠点として東京に、2003年に名古屋、2020年に大阪、京都、2022年には福岡にオフィスを設立しました。

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