タイムベース競争は、「時間」、つまり迅速性が経営においてどのような力を持ち、どのように競争優位につながるかを明らかにする。市場の動きや予期せぬ障害に直面した際に、素早く先手を打てる企業は、変化への適応力(アダプティブ・アドバンテージ)という優位性を有する。タイムベース競争は、時間を重要な経営資源ととらえるのみならず、戦略の基盤と位置付ける考え方だ。

この概念をビジネスの世界に広く知らしめたのは、BCGのジョージ・ストークである。彼は1988年のハーバード・ビジネス・レビュー誌の論文 “Time—The Next Source of Competitive Advantage”(邦訳: 時間を武器とする競争戦略――FMS時代の競争優位の源泉)でこの概念を示し、1990年には続編となる書籍 Competing Against Time: How Time-Based Competition Is Reshaping Global Markets(邦訳:『タイムベース競争戦略: 競争優位の新たな源泉・時間』ダイヤモンド社)が刊行された。

「時間」をコストと品質に次ぐ競争優位の源泉とするこのコンセプトの源流は、日本企業の観察にある。筆者らは、本書の邦訳版の冒頭にこのように記している。

「1979年のことだが、ある顧客が我々にかなり驚くべきデータを示してくれた。その顧客は、アメリカとヨーロッパにある主な工場の実績を日本の関連会社と比較していた。日本の関連会社は断然高い生産性、優れた品質、ずっと少ない在庫、無駄のない空間、はるかに短い製造時間で運営されているとわかったのだ。しかもこのすべてが、顧客の自社工場よりもはるかに少ない生産量と多様な製品という不利な事情にもかかわらず、成し遂げられていた。こうした実績の核心は時間にある、と我々にはわかった」

このタイムベース競争の考え方を推し進めると、工夫しだいで時間を短縮して同時にコストも下げられることが明らかになっていった。

タイムベース競争をどう実践すべきか

迅速性をベースとした適応力は、企業のバリューチェーンのあらゆる段階で構築できる。タイムベース競争を実践する企業となるためには、企業は次の3つの重要領域において組織的・構造的な変革を実行しなければならない。

  1. 製造 ジャストインタイム生産と柔軟な生産体制を構築する。これにより、より少ない従業員で、より多くの製品を、より短時間かつ低コストで生産できるようになる。工程の中に潜む待ち時間を削減することで、生産性を低下させることなく、時間をベースとした競争優位が生み出される。
  2. 販売・流通 次のステップは、製造プロセスの改善によって得られた時間的優位を失わないよう、販売・流通チャネルを最適化することである。この一例は、売れた分だけを出荷する仕組みが挙げられる。在庫を持たないため保管スペースが少なくて済み、必要な人員も削減できる。
  3. イノベーションと製品開発 最後に、イノベーションサイクルにおいて、競合他社よりも早く製品を市場に投入することである。新製品の開発・導入サイクルの短縮によって、企業は製品を最初に市場へ届けるという即時的な優位性を獲得する。これは業界内のパワーバランスを変化させ、競合他社に対応を迫ることにつながる。

    これら3つの領域のすべてにおいて時間的ロスを抑制、あるいは排除することで、企業はコストを下げ、品質を高め、顧客により近い存在であり続けることができる。つまり、時間ベースの競争優位が生み出される。

タイムベース競争 関連論考

タイムベース競争 エキスパート

George Stalk

Senior Advisor
Toronto

リーブス マーティン
Martin Reeves

Senior Advisor, Former Chairman of the BCG Henderson Institute
San Francisco - Bay Area