地政学リスクを背景に、世界のクロスボーダー・ウェルスは8.7%増の14.4兆ドルに到達
【参考資料】
(本資料は、2025年6月24日に米国で発表されたプレスリリースの抄訳です)
ボストン発、2025年6月24日 ―― 経営コンサルティングファームのボストン コンサルティング グループ(以下、BCG)は、2025年版グローバルウェルス・レポート「 Global Wealth Report 2025: Rethinking the Rules for Growth 」(以下、レポート)を発表しました。BCG では、家計資産の規模やウェルスマネジメント(富裕層向け運用サービス)業界の動向をまとめたレポートを毎年発表しており、今回は25 回目となります。
世界の家計金融資産は305兆ドルと前年比8.1%増、日本の家計金融資産は14.7兆ドル
2024年末の世界の家計金融資産は、前年比8.1%増の305兆ドルと推計され過去最高を記録しました。日本の家計金融資産は14.7兆ドルで、米ドル換算では円安を背景にマイナス成長。円換算では前年比1.9%増の低成長となりました(図表)。

レポートでは今後、世界の資産形成をアジア太平洋地域が牽引すると推測しています。日本を除くアジア太平洋地域では2029年までに家計金融資産が年平均9%で成長すると予測されており、北米(4%)、西欧(5%)、日本(5%)を上回る見通しです。
2024年の世界のクロスボーダー・ウェルス(国外に預ける資産)は前年から8.7%増の14.4兆ドルとなり、過去4年間の年平均成長率(6.3%)を大きく上回りました。この背景には、地政学リスクの高まりから、資産を地理的に分散させたり、より安定した国・地域に預けたりする需要が増していることがあります。クロスボーダー・ウェルスのブッキングセンターとしては、シンガポール(11.9%増)とアラブ首長国連邦(UAE、11.1%増)が特に急速に成長。2029年までに新たに形成されるクロスボーダー・ウェルスの3分の2が、スイス、香港、シンガポールに集約されると予測しています。
ウェルスマネジメントの運用資産残高は13%増、生成AIによる新規開拓営業に成果も
レポートでは、業界をめぐる状況について次のような指摘をしています。
- 2024年のウェルスマネジメント(富裕層向け運用サービス)における運用資産残高は前年比13%増と、全体の家計金融資産の伸び(8.1%)を大きく上回った。しかしながら、金利環境の変化によりマージンが圧迫された企業が多く、収益の成長率は7.1%にとどまった。
- 市場環境や新規人材採用などの外部要因によらない自律的な成長(オーガニック成長)の観点では、ユニバーサルバンク(預金業務から運用まで幅広い金融サービスを手がける大手銀行)がウェルスマネジメント特化型(ピュアプレー)企業を上回る成果をあげた。ユニバーサルバンクにおける運用資産の成長の32%がもともと在籍しているアドバイザーによるもので、これは特化型企業における割合(15%)の2倍に相当する。
- 見込み顧客の開拓における生成AIの導入も進展しており、先進企業の中には、リード獲得数が5倍、コンバージョン率が2倍に改善した事例もある。加えて、データドリブンのリード管理システムを導入した企業では、製品収益が最大15%増加し、生産性が20~30%向上したケースもあった。
レポートでは、成長を推進したい企業にとって重要なポイントとして、「ブランドの差別化」「AIエージェントを活用した新規顧客獲得」「データドリブンのレコメンデーションシステム」「次の顧客であるデジタルネイティブ世代との関係性構築」の4つを挙げています。
レポートの共著者でBCGチューリッヒ・オフィスのマネージング・ディレクター&シニア・パートナー、Daniel Kesslerは「今後は、AIを活用した見込み顧客の開拓、サービス利用開始時のサポートの個別最適化、そして生産性を高めるデジタルツールを取り入れた企業こそが、次の成長の波を捉えることができるでしょう。資産は世界中で増えていますが、それをどう取り込むかが、ウェルスマネジメント企業にとっての最大の課題です」とコメントしています。
■ 調査レポート
「 Global Wealth Report 2025: Rethinking the Rules for Growth 」
■ 日本における担当者
栗原 勝芳
マネージング・ディレクター & パートナー
BCG保険グループの日本リーダー。金融グループ、コーポレートファイナンス&ストラテジーグループのコアメンバー。
東京大学経済学部卒業。株式会社大和証券グループ本社、外資系コンサルティングファームを経て現在に至る。
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