Saved To My Saved Content

多くの大企業で、CEO という「新たな最高AI責任者」が誕生している。調査に回答したCEOの約4分の3は、「自身はAIに関する主要な意思決定を担っている」と回答しており、この割合は前年の約2倍となった。

CEOは、AIが単なるテクノロジーにとどまるものではないことを認識している。AIは組織運営のあり方を根底から変える可能性があり、戦略、オペレーション、企業文化、リスク管理、人材といった幅広い領域に影響を及ぼすものだ。この点で、経営チームとの緊密な連携を通して、組織と経営の観点を結びつける権限と視座を備えたCEOの果たす役割は大きい。

多くのCEOが自社のAI施策の成否について自ら責任を担うなか、AIは2026年に極めて重要な局面を迎える見通しだ。事実、調査に回答したCEOの半数は、AIが期待された成果を上げられなければ自身の職責が問われると考えている。

責任の高まりに対応するかたちで、CEOは2026年にAI投資のさらなる拡大を計画している。調査によると、企業は2026年のAI関連支出を年間売上高の約0.8%から約1.7%へと引き上げ、前年からほぼ倍増させる見込みである。

BCGが実施するグローバル調査「AI Radar」は3年連続で、AIに対する経営層の意識の変化を捉えてきた。今回の調査には16市場約2,400名の経営幹部が回答し、そのうち640名はCEOである。

以下のスライドショーでは、調査結果とそこから得られた示唆をより詳細に整理している。特にCEOの役割と、AI投資における投資対効果(ROI)実現への取り組みに焦点を当てた内容となっている。

企業におけるAI投資は拡大の一途

企業のAI投資の増加は、AIが中核的な経営課題へと急速に位置づけられてきたことを示している。(AI投資には、テクノロジーやインフラ、データ基盤の整備、AI活用の促進、人材確保や育成、アップスキリング、外部パートナーへの支払いなどにかかる費用が含まれる。)

AI投資の水準は業界によって差が見られる。調査によると、テック企業や金融機関はいずれも、2026年に年間売上高の約2%をAIに投じる計画である。一方、産業財企業や不動産企業では1%未満にとどまる見込みだ。

企業は、AI活用に伴うリスクを踏まえたうえでこうした投資を行っている。回答者の半数超は、前年に引き続きデータプライバシーとサイバーセキュリティに関して懸念を抱いていることがわかった。同様に回答者の41%は、AIの意思決定に対する管理体制が整っていないことや、その判断プロセスへの理解不足に不安を感じている。

CEOはAI投資にさらに前向きに

企業におけるAI投資の拡大は、CEOがAIにより深く関与する潮流が高まってきたことと密接に関係している。調査に回答したCEOの65%は、「AI活用の加速」が自身の最重要課題の上位3つに入ると回答しており、AIを自社の成長と生産性の双方を向上させる有力な手段として位置づけている。

また、CEOの約80%は自社のAI投資のROIを1年前より楽観視している。その一因として、自律的に計画・実行・学習を行うAIエージェントの急速な進化がある。調査によると約90%のCEOが、AIエージェントの導入によって2026年に定量的な成果が生まれると考えていることがわかった。

企業のAI投資に縮小傾向はみられない。調査に回答した企業の90%超が、仮に今後1年以内に投資が成果を上げなかった場合でも、現在と同等かそれ以上の水準でAIへの投資を継続する計画である。

さらに、2028年までに各業界における「成功」の定義そのものがAIによって塗り替えられると考えているCEOは約90%にのぼった。企業は日常業務へのAI導入にとどまらず、重要な業務プロセスの再構築へと踏み込んでいくとみられる。全く新しいビジネスモデルを創り出す企業も少なくないだろう。こうした動きの背景には、「エンドツーエンドの変革こそがAI投資のROIを最大化する」という認識がある。

調査によると約90%のCEOが、AIエージェントの導入によって2026年に定量的な成果が生まれると考えていることがわかった。

AIの効果を確信しているCEOの割合は、グローバルウエストよりもグローバルイーストの諸地域で高い。例えば、調査に回答したインドや中華圏のCEOの約4分の3はAI投資でROIを得られると確信しており、その割合は英国、米国、欧州を大きく上回っている。一方、グローバルウエストのCEOの方が、自社がAIに投資する理由として「競争に後れを取らないようにするため、もしくは外部からプレッシャーを感じているため」と回答した割合が高い。これには投資家からの監視がより強く働いていることが関係しているとみられ、短期的な株式市場の圧力が意思決定に影響を及ぼしている可能性がある。

CEO以外の経営幹部では、CEOほどAIの効果に対する確信は顕著ではない。立場が経営トップから離れるほど、「AIが最終的に成果をもたらす」という確信は小さくなる傾向にあり、その割合はCEOで62%であるのに対し、最高責任者層以外の非テクノロジー系幹部では48%にまで下がっている。

この傾向は、「チェンジ・ディスタンス」と呼ばれる現象によって一部説明がつく。変革に関する意思決定に近い立場にいる人ほど変化を前向きに捉え、そこから距離がある人ほど慎重になる傾向があるのだ。CEOは、その経歴ゆえに変化への適応に長けている。これまでのキャリアのなかで数々の課題を乗り越え、能力を伸ばし、新しい責任を担ってきた経験があるからだ。

別の見方をすれば、AIを自社に深く根付かせるために何が必要なのかを、CEOが十分に把握できていない可能性もある。日々の業務でAIがどのように活用されているかをより近くで見ている他の経営幹部の方が、直面している課題を現実的に捉えているのかもしれない。

先駆型のCEOは好循環を生み出している

調査結果に基づくと、CEOはAIとの向き合い方に応じて3つの類型に分けられる。

慎重型(CEOの約15%): AIの可能性を認識しつつも、段階的に導入を進めている。AIへの投資は行うものの、試験運用や小規模な改善にとどまる傾向がある。効果に対する明確な裏付けや競合他社の動向を見極めながら方向性を定める場合が多く、進展は漸進的である。不安感が強く、AIの効果について十分な確信は持てていない。

実利重視型(CEOの約70%): 慎重型より積極的な姿勢を取っている。AIや人材への投資を拡大しており、CEO自身もAIを使用したり理解を深めたり、活用の可能性を検討したりするなど、AI関連の取り組みに週7時間を費やしている。AIに対して前向きではあり、着実に進展はしているものの抜本的な変化を起こすまでには至っておらず、市場の動きに歩調を合わせながら前進している。

先駆型(CEOの約15%): 果断に決断を下している。従業員の約4分の3に対してリスキリングを実施しており、全社レベルの大規模な変革に焦点を当てている。業種別では、テクノロジーやエネルギー・公益インフラで先駆型のCEOが最も多く見られる一方、保険、産業財、不動産では少ない。

先駆型のCEOは体系的なアプローチでAIに対応している。AIを最優先課題に位置づけ、大規模な投資を行い、従業員のアップスキリングを迅速に進めることで、それぞれの効果が高まる好循環を生み出している。導入が加速し、成果への確信が高まり、大きなリターンが生まれることで、さらに大胆な一手に踏み切れるという循環だ。

こうした対応の違いは、今後ますます重要性を増していくと考えられる。先駆型のCEOは、AIを体系的に導入している領域ですでに生産性、スピード、意思決定の質が向上したと回答している。そのマインドセットと変革を牽引する姿勢は、AIの進化が次の段階を迎えるなかで優位な立場を築くことにつながるだろう。

AIエージェントはAIの次なる進化を担う存在であり、AIがこなす仕事の範囲を個別のタスク処理から、複数工程にまたがる業務フロー全体へと拡張している。従来のAIツールで可能なタスクは、コンテンツの生成や文書の要約、提案などが中心だった。それに対し、AIエージェントは一連のタスクを自律的に完遂でき、複数のシステムからデータを取得・構造化して、各種ソフトウェアツールと連携しながら、人間の介入を最小限に抑えた形で業務上の成果を生み出せるのである。

先駆型のCEOは体系的なアプローチでAIに対応している。

AIエージェントを活用することで、従業員はより広い裁量を持つようになり、さらに迅速に意思決定を行えるようになる。AIエージェントを前提とした業務プロセスの再構築が進むにつれて、企業は経営機能別の階層構造から脱し、よりフラットで機能横断的な組織へと移行していく。意思決定のあり方も、時間を要する従来の承認プロセスから、AIエージェントと人間が協働しリアルタイムで判断する形へと変化していくだろう。

先駆型のCEOはAIエージェントの導入に早くから積極的に取り組んでおり、2026年のAI関連投資のうち半分超をAIエージェントに振り向けている。また、慎重型のCEOと比べて、AIエージェントを業務領域やプロセス全体にわたってエンドツーエンドで導入する可能性が約2倍にのぼっている。


すべてのCEOにとって今後1年は、構想をどれだけ迅速に具体的な成果へと転換できるかが問われる年となる。調査に回答したCEOの多くが「AIに関する主要な意思決定者は自分である」と考えており、施策の成功に向けてこれまで以上のプレッシャーを感じている。企業がAI投資を拡大し、AIエージェントがより高度で複雑な業務を担うようになるにつれて、CEOの影響力は一層高まっていくと考えられる。

AIが関わる課題には、CEOの直接的なリーダーシップが求められるものが多い。具体的には、テクノロジーと人間が協働するオペレーティングモデルの構築や、将来に不安を抱く従業員とのコミュニケーション、さらには、AIは人間の判断力や創造性を拡張するものだとCEO自らが体現し、前向きな機運を醸成することも重要になる。

調査では、CEOが自社のAI活用を次の段階へと導くうえで特に重要となる一連のアクションを提示している。

CEOは、AIによって自社がどのように価値を生み出すのかを構想し、舵取りできる立場にある。変革の進展は、CEOがAIをどれだけ積極的に受け入れるかにかかっている。

原典: As AI Investments Surge, CEOs Take the Lead