BCG-WEF Project: The Net-Zero Challenge

Related Expertise: 気候変動・サステナビリティ, エネルギー, サステナビリティ戦略とトランスフォーメーション

BCGとWEFの共同プロジェクト: 温室効果ガス排出量ネットゼロへの挑戦

温室効果ガス排出量ネットゼロの達成を各社が急ぐなかで、多くの企業がビジネスのしかたの変革を迫られています。ネットゼロを巡る変化の緊急性や速度、範囲は、いまだ過小評価されています。しかし、早期に行動を起こせば大きな競争優位性を獲得できます。

BCGと世界経済フォーラム(WEF)の共同レポート

 

グリーン市場で勝機をつかむ: ネットゼロ社会に向けた低炭素製品の拡大展開

世界の平均気温上昇を産業革命前と比較して1.5度に抑えるという、パリ協定で掲げられた意欲的な目標を実現するためには、あらゆる経済セクターにおいて大規模な技術転換が求められます。非化石燃料などの代替策はすでに、世界の排出量の多くを削減しています。しかし、グリーン(環境配慮型)素材・製品、およびプロセスは、従来の環境負荷の高いものよりも大きなコストがかかります。幸いなことに、このコスト面の課題は克服できないものではありません。早期参入企業の動向から、急成長するグリーン市場で勝機をつかむために必要なことが見えてきます。

世界経済フォーラム「CEO気候リーダー・アライアンス」(the WEF Alliance of CEO Climate Leaders)とBCGによる最新の共同レポートでは、自社の取り組むべきグリーンビジネスを特定して創出し、拡大展開することで、早期参入企業にどのように追随することができるのかを検討しています。そのなかで、次のようなインサイトを導き出しました。

  • 特に産業財業界で、コストが大きな課題になっている。グリーン技術によって航空輸送を脱炭素化する場合について考えてみましょう。100%水素化処理エステル・脂肪酸(HEFA)のバイオジェット燃料による航空輸送は、排出量を50~90%まで削減できる可能性がありますが、トンキロあたりのコストを約8%まで増加させると予想されています。また、まだ実用化前の段階で拡大展開はされていませんが、合成ケロシンのような完全にネットゼロの燃料では運賃が約2倍になると考えられます。
  • コスト高は技術の規模拡大により改善する見通し。グリーン技術の規模が拡大すれば、高コストというデメリットは改善する可能性が高いと考えられます。たとえば米国では、太陽光発電のコストが石炭や天然ガスと同等に達しています。また、商用のバッテリー式電気自動車(BEV)、および水素電気自動車(FCV)の総所有コスト(TCO)は、2050年までに内燃機関(ICE)自動車を下回ると予想されています。さらに欧州では、早ければ10年後にも、温室効果ガスが発生しない方法で製造される「グリーンスチール」のコストが、化石燃料由来と同等になる可能性があります。
  • グリーン製品には未開拓の市場がある。2022年6月にBCGが実施したサステナビリティに関する消費者調査によると、「環境保全」だけを目的にサステナブルな製品を購入する消費者は10%未満ですが、「健康」「安全」「品質」など他のメリットと関連付けた場合、どの製品カテゴリーでも約2~4倍(消費者の20~43%)に増加することがわかっています。また、「利便性」「情報不足」「コスト」などのデメリットが改善されることで、その割合はさらに2~4倍(約80%)にまで上昇します。付加価値となるメリットを提供し、障壁となるデメリットを改善する方法を見つけ出した企業は、大きな未開拓市場にアクセスすることができるのです。
  • 脱炭素化へのコミットメントがグリーン市場の追い風になる。2022年11月時点で、1,957社の企業がSBTiに認定された科学的根拠に基づく排出量の削減目標を設定し、2,103社が目標の設定を約束するコミットメントを発表しています。その数は、多くのセクターで大幅に増加しています。企業がこうしたコミットメントを実行に移すにしたがって、「グリーンプレミアム市場」が立ち上がり始めています。さまざまな業界の企業が低炭素な素材やサービスを市場に投入し、価格プレミアムを獲得し始めているのです。
  • 多くの製品で必要とされる一部のグリーン素材は、不足する可能性が高い。SBTiに認定されたスコープ3排出量削減のコミットメントを発表している川下企業の市場シェアは、その達成に必要な素材を供給する川上企業のうち同様のコミットメントを発表している企業のシェアをはるかに上回っています。このようなコミットメント水準の差により、一部のグリーン素材が不足する大きなリスクが生じています。

消費者に訴求するグリーン製品を生み出し、その提供に必要なリソースを確保するためには、川下企業も川上企業もgo-to-marketアプローチを見直し、6つの重要なアクションを取る必要があります。

ネットゼロをめざすCEOへの手引き

気候変動対策が世界規模で加速する一方、企業の多くはいまだ準備不足の状態です。将来起こり得る変化を過小評価し保守的に行動していると、座礁資産化やビジネスモデルの陳腐化などのリスクにつながりかねません。

自動車や食品、海運、電力など、さまざまな業界のリーダー企業の取り組みによって、ネットゼロへの移行は持続的な競争優位性をもたらす事業機会であることが明らかになってきています。こうしたリーダー企業は、単に価値を創造しているだけではありません。収益性の高い持続可能な未来への道筋を示すことで、業界に変革を引き起こしているのです。

気候変動対策のリーダー企業について、次の3つのことが明らかになっています。

  • 競争優位性を構築できる。気候変動対策のリーダー企業には優れた人材が集まります。コストを削減しつつ高い成長を実現でき、規制リスクを回避し、より有利に資金を調達できるという点でも優位性があります。加えて、高い株主価値を実現することもできます(図表1)。
  • 実質ゼロコストで排出量を大幅に削減できる。これは一例ですが、エネルギー効率を高め、低コストの再生可能エネルギーに切り替えられれば、大幅なコスト削減を実現できます。そこで節約された費用を、コストがかさみがちな脱炭素化の資金として活用することが可能になります(図表2)。ほとんどの企業が、 実質ゼロコストで排出量の少なくとも3分の1を削減することができます。食品、消費財、自動車などの業界では、スコープ1、2の排出量の約70%を実質ゼロコストで削減できます。
  • 業界の取り組み水準を向上させることができる。サステナビリティは今や、競争優位性にかかわる重要事項です。企業は少なくとも、「後れをとっている」と見られたくはなく、ある企業が動けば他の企業もそれに続かなければならないというプレッシャーが生まれています(図表3)。めざすべきものは急速に変化しています。勇気をもって野心的な目標を設定した 一企業によって、業界全体が動く可能性があります。

ネットゼロへの道のり

あらゆる業界の経営者が、前例のない世界規模の変化に直面し、かじ取りを迫られています。ネットゼロへの道のりを歩むには、経営戦略やオペレーション、事業ポートフォリオ、組織をうまく変革する必要があります。先行きは依然不透明ですが、注意すべき課題や考慮すべき動きを明らかにすることは可能です。そうした目的で、BCGとWEFは共同レポート「The CEO Guide to Climate Advantage」を作成しました。

経営リーダーの皆さまにはレポート全文をお読みいただくことをお勧めしますが、以下に、ネットゼロへの移行にあたり重要な4つの基本的要素を示します(図表4)。

ネットゼロへの移行にあたり重要な4つの基本的要素

ネットゼロ経営戦略

ネットゼロ・オペレーション

ネットゼロ事業ポートフォリオ

ネットゼロ組織

今こそコミットし、社内外の人々を巻き込み、行動するときです。世界は史上最大の変革に乗り出しています。何にもまして大胆かつ意欲的なリーダーシップが求められています。行動を起こすときです。

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