【参考資料】
(本資料は、2025年9月23日にフランスおよび米国で発表されたプレスリリースの抄訳です)
パリ・ニューヨーク発、2025年9月23日 ―― 経営コンサルティングファームのボストン コンサルティング グループ(以下、BCG)は、国際的なサステナビリティ評価機関であるEcoVadisと共同で、サプライチェーン全体におけるCO2排出量「スコープ3」[注1]に着目したレポート「 Scope 3: From Unmanaged Risk to Untapped Opportunity 」(以下、レポート)を発表しました。レポートでは、スコープ3排出量の削減に向けた対応を怠れば、2030年までに世界の企業全体で年間5,000億ドル超の負債が発生する可能性があると指摘しています。企業は現在、気候変動の直接的影響による「物理的リスク」と、低炭素社会に向けた政策・市場・技術の変化に伴う「移行リスク」という二重の圧力に直面しています。
スコープ3の削減目標を設定している企業はわずか8%、日本では12%
企業におけるスコープ3の排出量は平均すると、自社の企業活動に伴うスコープ1(自社の直接排出)およびスコープ2(自社の電力・熱・蒸気の使用に伴う排出)の合計の21倍に達しています。しかし、EcoVadisに排出量を報告している企業のうち、スコープ3を開示している企業は世界全体で24%、削減目標を設定している企業はわずか8%にとどまっています。日本企業においては、スコープ3の排出量を開示している企業が32%、削減目標を設定している企業が12%と、世界平均を上回る水準でした。レポートでは、現在の段階でサプライチェーンにおいて気候変動対策へ投資を行うことで、カーボンプライシング制度[注2]に伴って生じる将来的なコストを回避し、結果として最大で3~6倍のROI(投資収益率)を得られる可能性があると明らかにしています。
EcoVadis共同CEO兼共同創業者のピエール=フランソワ・タレールは次のように述べています。「気候変動対策を怠ることで財務リスクが生じることは明らかですが、これは大きな機会でもあります。スコープ3の排出量削減に取り組むことで、企業は収益性を確保しながら、より強靭なサプライチェーンを構築できるのです。排出量の大部分を占めるサプライヤーとの協働が、取り組みを効果的に始める出発点になります」
スコープ3排出量削減に向けた5つのポイント
レポートでは、企業がサプライチェーンの脱炭素化を加速するうえで最も効果的な5つの行動を提示しています。
- サプライヤーエンゲージメント:気候変動対策の重要性と目標をサプライヤーと共有し、排出削減に向けた共同の取り組みを推進する。
- 排出量の測定:「温室効果ガス(GHG)インベントリ(排出・吸収量の目録)」を整備し、最終的には製品単位の排出データも把握する前提で、事業全体での排出量を継続的にモニタリングする。
- 気候変動対策を統括する専任チームの設立:全社的な低炭素化方針を設定し、実行を主導する専任のチームを設ける。
- 気候移行計画の策定:低炭素型ビジネスモデルへの移行に向けた全社的な計画を策定する。
- 排出量削減予算の確保:企業全体で脱炭素化施策を推進するための財源を確保する。
BCGロンドン・オフィスのマネージング・ディレクター & パートナーで、本レポートの共著者である ダイアナ・ディミトロヴァ は次のように述べています。「気温上昇を1.5℃[注3]に抑える、もしくは少なくとも2℃未満にとどめるためには、今後5年間が極めて重要です。スコープ3の排出はスコープ1・2の21倍に達しており、企業にとってサプライチェーンにおける排出への対応は、もはやコンプライアンス上の義務にとどまらず、財務実績を左右する重要な要因となっています。年間5,000億ドル超の負債リスクが懸念される一方、迅速で果断な行動をとれば、企業のレジリエンス(強靭性)と収益性を同時に向上させることができます」
[注1] スコープ3には上流(原材料やその調達時の輸送にかかる排出)と下流(製品の使用や廃棄にかかる排出)が含まれる
[注2] 政府がCO2排出に価格を設定し、企業に金銭的な負担を課すことで排出削減を促す制度
[注3] 地球の平均気温の上昇を産業革命前の水準と比較して1.5℃以内に抑えることを目指す国際的な目標
■ 調査レポート
「 Scope 3: From Unmanaged Risk to Untapped Opportunity 」
■ 調査概要
EcoVadisによる世界8万3,000 社、13万3,000 件以上のカーボン評価データと、BCG の統計・データに基づく分析を組み合わせて実施
■ 日本における担当者
半谷 陽一
マネージング・ディレクター & シニア・パートナー
BCG気候変動・サステナビリティグループ 日本リーダー。産業財・自動車グループ、コーポレートファイナンス&ストラテジーグループのコアメンバー。
大阪大学工学部卒業。同大学大学院工学研究科修了。三菱重工業株式会社を経て現在に至る。
森原 誠
マネージング・ディレクター & パートナー
BCGパブリックセクターグループ 日本共同リーダー。気候変動・サステナビリティグループのコアメンバー。
東京大学法学部卒業。カリフォルニア大学ロサンゼルス校法科大学院修士(LL.M.)。総務省を経てBCGに入社。その後、青山社中株式会社を経て、BCGに再入社。BCGシカゴ・オフィスに勤務した経験もある。
■ 本件に関するお問い合わせ
ボストン コンサルティング グループ マーケティング 中崎・中林・天艸
Tel: 03-6387-7000 / Fax: 03-6387-0333 / Mail:
press.relations@bcg.com
■ EcoVadisについて
EcoVadisは、グローバルサプライチェーンにおけるサステナビリティ・インテリジェンスと評価を提供することで、企業活動におけるリスク低減及び改善を促進し、持続可能な社会を実現することをミッションとしています。現在250の業種と180カ国において150,000社以上のサプライヤーが評価受審しています。バイヤー企業は自社のサプライチェーンネットワークにおけるサプライヤー企業の評価を基に、強みや改善点の把握に加えて是正措置実施までをEcoVadisプラットフォーム上で統合管理することができます。