CEO交代につながる長期リスクは過小評価されている可能性も
【参考資料】
(本資料は、2026年4月1日に米国で発表されたプレスリリースの抄訳です)
ボストン発、2026年4月1日 ―― 経営コンサルティングファームのボストン コンサルティング グループ(以下、BCG)は、CEOが直面するストレス要因について分析したレポート「What (and Who) Is Keeping CEOs Up at Night?」(以下、レポート)を発表しました。本レポートは、売上高1億ドルから50億ドル超の企業を率いるCEO500人へのアンケート調査と、S&P 1200構成企業におけるCEO交代に関するデータ分析を組み合わせた、BCG初の調査を基にしています。
ストレス要因の上位は成長目標などの業績プレッシャー。目先の課題に多くの時間を取られる
CEOに対し、直近の四半期における仕事上のストレスを0(ストレスなし)から100(極度のストレス)までのスコアで評価してもらった結果、7割超が臨床的に高ストレスとされる水準にあり、平均ストレススコアは66.7に達していることがわかりました。ストレスの主な要因としては、「成長目標の達成」や「コスト管理」など従来型の業績プレッシャーが上位を占めています(図表1)。また、回答者の57%が短期的な課題に多くの時間を割かれていると答えており、長期的なリスクや機会への対応が後回しになっている可能性が示唆されています。
BCGミュンヘン・オフィスのマネージング・ディレクター&シニア・パートナーで、本レポートの共著者であるジュディス・ウォーレンシュタインは、次のように述べています。「短期的な目標の達成と長期的な成長の両立は、これまでもCEOにとって大きなストレス要因でした。しかし現在では、より短い時間軸で、より目の肥えた取締役会の厳しい監視の下でそれを実現する必要があります。取締役会自身も強いプレッシャーにさらされており、その緊張感がCEOに伝わっているのです」
社内の身近なステークホルダーが大きな圧力要因に
実際、ステークホルダー別にみると、最も大きなストレス要因となっていたのは「取締役会」で、「従業員」や「経営陣」がこれに続きます(図表2)。CEOの9割近くが取締役会と強い関係性を築いていると答えているにもかかわらず、最もストレスの大きいステークホルダー群に位置付けられています。CEOの3人に1人が、6カ月前と比べて、取締役会に対してより多くの成果を示さなければならないと感じています。
経営陣はストレス要因の上位3位に入っており、特に大企業のCEOにとっては最大のストレス要因となっています。また、4分の1以上のCEOが、最高経営幹部の中で自らの職位を脅かすリスクが最も大きい存在としてCFOを挙げています。
「株主アクティビズム」や「従業員の不満」は見落とされている可能性
CEOは足元の業績に強く意識を向ける一方で、自身の在任期間に影響を与える長期的なリスクへの認識には、実態とのずれがある可能性があります。レポートでは、CEO交代と密接に関連する要因のいくつかが、現在のストレス要因としては相対的に低く位置付けられている点が明らかになりました。具体的には以下の通りです。
- 株主アクティビズムへの関心の低さ: BCGの分析では、アクティビスト(物言う株主)のターゲットになることでCEO交代の可能性が24%高まることが明らかになっているにもかかわらず、アクティビストはストレス要因としては下位グループに位置付けられている。短期的な業績達成へのプレッシャーが強まる中、長期戦略を支持する株主基盤を十分に構築できていなければ、業績が揺らいだ局面でアクティビズムが現実のリスクとして浮上する可能性がある
- 従業員の不満への過小評価: BCGの分析によると、従業員の純増率[注1]が10%低下した場合、CEO退任の可能性は12%高まる。一方で、従業員の不満は多くのリーダーにとって優先度の高い課題とはなっていない。従業員の不満の高まりに懸念を示すCEOは半数未満にとどまっており、対応が不十分なままであれば離職の増加につながる可能性がある
- AI――将来的には圧力となる可能性も: 投資リターンへの期待が高まる一方で、AIはストレス要因としては11項目中9位に位置している。CEOの84%がイノベーションの必要性に対してストレスよりも意欲を感じていると答えている。これは、AIがCEOの日々のプレッシャーの源となる短期的な成長やコスト削減といった成果にまだ十分に結びついていないためと考えられる。しかし、CEOがAIに関する発表を行うたびに市場の期待は高まっていき、より早期に成果を示すことを求められる可能性がある
本レポートでは、多くのCEOが自らの役割を孤独なものと感じており、取締役会や従業員をはじめとするさまざまなステークホルダーからのプレッシャーを一手に引き受け、心理的に大きな負担を抱えている現状が浮き彫りになりました。さらに大きな観点として、CEOは短期的な業績への対応という喫緊の課題と、長期的リスクへの対応や組織の健全性の維持といった、目に見えにくいものの同様に重要な課題の双方に向き合うことが求められていると指摘しています。
[注1] 従業員の純増率は、一定期間における新規採用者数と退職者数の差を、総従業員数に対する割合として示したものと定義される。本レポートにおける算出は、年次の報告データに基づいている
■ 調査レポート
「What (and Who) Is Keeping CEOs Up at Night?」
■ 調査概要
CEOへのアンケート調査と、S&P 1200構成企業におけるCEO交代に関するデータ分析を組み合わせたグローバル調査
- CEOへのアンケート調査:
- 調査期間: 2026年1月7日~21日
- 調査対象:売上高1億ドルから50億ドル超の企業を率いるCEO500人
- CEO交代に関するデータ分析:
- 過去5年間のS&P 1200構成企業における実際のCEO交代データを目的変数とし、ロジスティック回帰分析を用いて、次四半期におけるCEO交代の可能性を予測。説明変数には、従業員の純増率、決算説明会におけるセンチメント分析、ネガティブな報道、TSR(株主総利回り)などが含まれる
■ 日本における担当者
木村 亮示 マネージング・ディレクター & シニア・パートナー
BCGコーポレートファイナンス&ストラテジーグループの前グローバルリーダー。BCGテクノロジー・メディア・通信グループ、およびトランスフォーメーショングループのコアメンバー。BCGアジア・パシフィック地区の人材チーム総責任者。
京都大学経済学部卒業。HEC経営大学院経営学修士(MBA)。国際協力銀行を経て現在に至る。
苅田 修 マネージング・ディレクター & シニア・パートナー
BCGヘンダーソン研究所(BHI) フェローで、BHI Japanリーダー。BCGコーポレートファイナンス&ストラテジーグループ、ヘルスケアグループ、および消費財・流通グループのコアメンバー。医療機器セクターの北東アジアリーダー。
東京大学経済学部卒業。ノースウェスタン大学ケロッグ校経営学修士(MBA)。株式会社日本興業銀行(現みずほフィナンシャルグループ)を経て現在に至る。
■ 本件に関するお問い合わせ
ボストン コンサルティング グループ マーケティング 中崎・中林・谷口
Tel: 03-6387-7000 / Fax: 03-6387-0333 / Mail: press.relations@bcg.com