ビジネスモデル・イノベーションとは何か
ビジネスモデル・イノベーションとは、顧客へのバリュープロポジション(価値提案)と、それを支えるオペレーションモデルの両方を、同時に、かつ相互に支え合う形で変革することにより、競争優位性と価値創造を高めるアートです。バリュープロポジションのレベルでは、ターゲットセグメント、商品・サービス、収益モデルの選択に関わる変革に取り組みます。オペレーションモデルのレベルでは、価値提案の実現のしかたについての以下のような意思決定を通じて、収益性、競争優位性、価値創造をどう推進するかに重点を置きます。
- バリューチェーン上のどこで戦うか
- 魅力的なリターンを確保するために、どのようなコストモデルが必要か
- 成功するには、どのような組織構造と組織能力が求められるか
ビジネスモデル・イノベーションは、トランスフォメーションにもきわめて重要です。多くの組織が共通して抱える懸念として次のようなものがあります。どのタイプのビジネスモデル・イノベーションが突出した成果につながるか。どうしたら中核事業を脅かさずに実現できるか。新たなモデルを開発し、迅速にテストし、スケールさせる組織能力をどう構築するか。組織を変革へと動かすことは容易ではありませんが、現在の戦略環境を踏まえると、それは不可欠な取り組みです。
ビジネスモデル・イノベーションによって成長を目指す企業は、以下のような重要な問いに直面します。どの程度広範な取り組みにすべきか。適切なリスクの水準はどの程度か。一度きりの取り組みなのか、それとも継続的な組織能力が求められるのか。
これらの問いに答えるには、すべてのビジネスモデル・イノベーションの取り組みが同じではないことを理解することが重要です。ビジネスモデル・イノベーションには4つの異なるアプローチがあることを理解すれば、成長への道筋を設計する際により効果的な判断をする助けとなるでしょう。
1. リインベンター・アプローチは、コモディティ化や新たな規制といった業界の根本的な課題に直面し、ビジネスモデルが徐々に劣化し、成長の見通しが不透明な状況で採用されます。このような状況では、企業は顧客への価値提案を再創造し、新たな優れた商品・サービスを収益のとれる形で実現できるよう、オペレーションを再整備する必要があります。
2. アダプター・アプローチは、現在の中核事業が、たとえ再創造したとしても、根本的なディスラプションに対抗できないと考えられる場合に用いられます。アダプターは、隣接する事業や市場を探索し、場合によっては中核事業から完全に撤退することもあります。適切なビジネスモデルで成功する「新たなコア」を見つけるために、継続的に実験を推進するイノベーション・エンジンを構築することが求められます。
3. マーベリック・アプローチでは、ビジネスモデル・イノベーションを活用して、より成功可能性の高い中核事業をスケールさせます。マーベリック(型破り)はスタートアップ企業である場合もあれば、変革を起こす既存企業である場合もありますが、自社の中核的な競争優位性を活用して業界に革新をもたらし、新たな標準を打ち立てます。このアプローチには、成長を推進するために、ビジネスの競争優位性を進化させ続ける能力が必要です。
4.アドベンチャラー・アプローチは、新規または隣接領域への進出を通じて、事業の範囲を積極的に拡大します。このアプローチでは、自社の競争優位性を正しく理解し、新たな市場で成功するために、その優位性の新たな適用方法には慎重な投資を行うことが肝要です。
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Nicolas Kachaner