
BCGフレームワーク「CIRCelligence」で循環型経済を生み出す
循環型経済は、採集から使用、回収を経て再利用される閉じたループの中で資源が回り続けるよう設計された、再生型の経済です。企業は個々の製品を再設計するだけでなく、ビジネスモデル全体を見直し、既存の経済システムを循環型へと変化させる必要があります。(英文)
地球の天然資源は開発されるより速いスピードで消費されています。現代の経済活動は、資源を採取し、生産に使用した後、廃棄する流れが主流となっています。もし私たちが現在のペースで資源を利用し続けるなら、世界経済の基盤を揺るがすことになるでしょう。
オランダに本拠を置くサークルエコノミー協会は、2020年の世界の資源循環率は2018年の9.1%を下回り、8.6%だったと推計しています。BCGの分析では、長期的な持続可能性を実現するためには世界の資源循環率を50〜70%まで引き上げる必要があります。
循環型経済は、資源を閉じたループの中で継続的に循環させることで、再生・再利用を実現するアプローチです。製品のライフサイクル全体を、製品の原材料から、生産工程で使用される資源、そして使用済みの資源を回収し、最終的に再利用するエンドオブライフ戦略に至るまで、循環的な流れに沿って設計します。
循環型経済を発展させるためには、企業は個々の製品の設計を見直すだけではなく、業務全体を見直す必要があります。さらに、ビジネスモデル全体を見直し、既存の経済システムを変えていく必要があります。循環型経済の原動力となる二次資源の収集、回収、販売、利用を可能にする基礎的なイノベーションと、資源そのものの価値が、巨大な経済成長を促します。
2050年に持続可能な世界を実現するうえで、鉄鋼は重要な社会課題となっています。人口と一人当たり鉄鋼消費量が増加し続ける中、環境に配慮し、限りある資源を保護する方法を模索しなければなりません。
鉄鋼は、自動車や建設など、他の複数の商品のバリューチェーン上で重要な位置を占めています。また、鉄鉱石や石炭などの一次産品市場の需要を牽引しています。鉄のリサイクルは他の多くの金属に比べて進展しており、廃棄された鉄鋼の85%が再利用されていますが、鉄スクラップが鉄鋼生産投入量に占める割合はまだ39%にとどまります。
BCGが2つのシナリオを置いて分析したところ、いずれのシナリオでも鉄スクラップの需要は今後大きく増加することが分かりました。2050年の世界の鉄鋼生産量28億トンのうち、約半分から7割を鉄スクラップで賄うことになり、一次鉄鋼生産量の増加をごくわずかに抑えられます。リサイクルを進めることでスクラップ需要が急増すると、鉄鉱石と冶金用石炭の需要も抑えられます。
ただ、この予測は、単独の企業の努力では実現しません。政府と産業界が協力して、移行へのインセンティブを与えて経済的に実現可能とし、変化を促すことが必要です。将来のリサイクル率には、世界的な経済成長や素材の代替など、その他の要因も大きく寄与します。
リサイクルへの動きが強まれば強まるほど、鉄鋼メーカーへの影響も大きくなります。大きな変化に対して、金属業界の企業はビジネスモデルを変更しなければなりません。場合によっては、一次金属、リサイクル材、代替製品を統合したマテリアル・プロバイダーとして自らを再定義する必要があるでしょう。
プラスチックは現代の生活に欠かせない素材です。しかし、環境保護団体やNGOは、プラスチックごみが土壌や水、大気に与える影響を長年にわたり警告してきました。今日、政府や産業界、社会は、プラスチックごみ削減策の必要性を認識しています。
近年では、「作る」「捨てる」というリニア型経済の弊害を解消する、あるいは軽減するために、循環型経済を実現する技術の可能性が注目されています。しかし、これらのソリューションは、すべての種類のプラスチックごみ(特に接着剤など他の素材と結合したプラスチック)に対応できるわけではありません。また、多くの市場ではリサイクルよりも新品や使い捨てプラスチックの方が安価であり、必要な回収・分別システムが整備されていない市場もあります。その結果、プラスチック消費量の約50%、海洋ごみの半分を占める使い捨ての軟質プラスチック(ビニール袋や包材など)は、そのほとんどが焼却、埋め立て、あるいは廃棄されてしまいます。
廃棄と再利用の間の大きなギャップを埋める有効な施策の一つが、ケミカルリサイクルです。経済性や事業化に向けた課題はさまざまですが、熱分解のような変換技術は新興市場から成熟市場まで、多くの市場で経済性を確保して展開できます。たとえばジャカルタでは、発生するプラスチックごみの最大3分の2を処理できる可能性があります。しかし、米国のメキシコ湾岸など十分な埋め立て用地がある地域では、政府が安価で環境に悪影響を及ぼす廃棄方法(主に埋立地)の経済性を低下させる施策を講じる必要があります。
(詳細は論考「プラスチックごみの循環型ソリューション (英文)」をご参照ください)
循環型経済の実現のために企業が取り組みを進めるなか、必要な資源は希少化しています。たとえばサステナブルなコットンを調達するには、農法を大きく変えるために莫大な投資が必要となります。しかし、サプライチェーンの規模を活かすことができれば、希少化する資源を確保し、安定した調達を実現することができます。
企業間で連携しその規模を活かすことは、サステナビリティに関する新たなルールがつくられつつあるなか、影響力を活かしてルールを策定・強化する観点でも重要です。
循環型経済は、採集から使用、回収を経て再利用される閉じたループの中で資源が回り続けるよう設計された、再生型の経済です。企業は個々の製品を再設計するだけでなく、ビジネスモデル全体を見直し、既存の経済システムを循環型へと変化させる必要があります。(英文)
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