
サステナビリティ・フロントランナーに見るこれからの優良企業のあり方
従来通りのビジネスの展開に厳しい制約がかかるなか、環境・社会面の便益と事業価値をともに生み出すために中核的なビジネスモデルを変更することで新たな機会を見出している企業があります。その取り組みを、進捗の程度により3つのグループに分けて紹介します。
経営リーダーにとって今、より一層重要になっている課題は、サステナビリティ(持続可能性)に関する幅広い制約条件のなかで舵取りしつつ、従業員や株主が期待する財務業績を達成することでしょう。この課題の解決の糸口の一つが、成長と価値創造をより広範な環境・社会的便益の創出と結びつける革新的なイノベーションの創出やビジネスモデルの構築です。
サステナビリティに関わるイノベーションは大きな機会と考えられています。脱炭素化を例にとると、BCGとGFMA(The Global Financial Markets Association)の分析では、2020年から2050年までの期間の累計で脱炭素化に関連する投融資需要は122兆ドルにのぼると推計されます。
特に気候変動に関するイノベーションが価値創出につながることは、既に先進的な企業によって示されています。欧米のエネルギー企業から成る第一世代の「グリーン・チャンピオン企業」は、アマゾン、アップル、フェイスブック(現メタ)、グーグルなどのハイテク企業と同レベルの株主利益を生み出しています。2017年10月から2020年10月までの間に、イタリアのエネルグループ、スペインのイベルドローラ、フィンランドのネステ、アメリカのネクステラ・エナジー、デンマークのオーステッド(いずれもエネルギー関連企業)などの企業は、30%程度の年平均TSR(株主総利回り)を生み出しました。また、ビヨンド・ミートやテスラなど、第二世代のグリーン・チャンピオン企業のリターンも、ほぼ70~80%に達しています。
これらの企業は、新しい市場に参入したり、経済的・社会的に優先度の高いニーズに応える商品・サービスを開発することで新たな収益源をどう生み出すかを実証しています。
(詳細は論考「次世代の気候変動イノベーション」をご参照ください)
社会的な便益を生みだすイノベーションの創出では、民間の大手企業だけでなく、スタートアップ、投資家、政府、大学、研究機関など多くの組織がパートナーシップを結び、リソースを出し合い、組織能力を交換し、新たな市場を開拓し、リーチと規模を拡大する必要があります。
新型コロナウイルス感染症パンデミックへの世界的な対応では、企業、投資家、政府が効果的な行動を求められたときに、いかに迅速かつ力強く行動できるかが示されました。科学と先端技術、起業家精神、賢明な政策、投資、そしてエコシステムによる協働の力の活用により、抜本的な変化を起こせることが証明されています。
従来通りのビジネスの展開に厳しい制約がかかるなか、環境・社会面の便益と事業価値をともに生み出すために中核的なビジネスモデルを変更することで新たな機会を見出している企業があります。その取り組みを、進捗の程度により3つのグループに分けて紹介します。
気候変動対策イノベーションに取り組む企業は、複数のアプローチを探るとともに、投資家や政府、研究機関を含むエコシステムを活用することが求められます。
事業価値と、環境・社会面での価値を両立させるビジネスモデルを開発するため、企業は4ステップから成るイノベーションサイクルを反復する必要があります。(英文)
私たちの研究から、企業がサステナビリティ向上に取り組むうえで自社単独では解決できない6つの障壁があることがわかりました。企業・業界の枠を超えたビジネス・エコシステムの構築により、こうした障壁を乗り越え、競争優位性を高められる可能性があります。(英文)
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