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2022年の世界のM&A市場はコロナ危機前の水準に減速、環境関連取引(グリーンM&A)が活発化~BCG調査

グリーンM&Aは環境関連以外の取引に比べ大きな価値を生み出す

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【参考資料】

(本資料は、2022年10月24日に米国で発表されたプレスリリースの抄訳です)

ボストン発、2022年10月24日 ―― 経営コンサルティングファームのボストン コンサルティング グループ(以下、BCG)は、パーダーボルン大学のSönke Sievers教授と共同で調査を行った2022年版M&Aレポート「The 2022 M&A Report」(以下、レポート)を発表しました。19回目となる今回のレポートでは、1990年1月~2022年7月に公表された84万件以上のM&A案件のデータを蓄積したBCGのデータベースに基づいて分析しています。

2022年のM&A市場は新型コロナウイルス危機前の水準と同等に

2022年7月までのM&A市場は、案件数は前年比13%減少、取引総額ベースでは前年比32%減の約1兆7,300億ドルと、新型コロナウイルス危機前の平均に近い水準となりました(図表)。コロナ危機後の2021年には景況感の改善などから急速かつ大幅に拡大しましたが、2022年はマクロ経済の厳しい状況によりペースが落ちたとレポートでは分析しています。

レポートの共著者でM&Aトピックのグローバルリーダーを務めるBCGミュンヘン・オフィスのマネージング・ディレクター & シニア・パートナー、Jens Kengelbachは次のようにコメントしています。「2022年のM&A市場は2021年に比べて停滞しています。しかし、高インフレ、金利上昇、経済成長の鈍化といった状況においても、M&A活動に資する長期的なトレンドが見受けられます。ESGに焦点を当てた取引は20年前から着実に増加し、環境関連の案件数は2倍に増加しました。事業買収や事業売却の理由としてのサステナビリティ(持続可能性)が重要性を増しています」

レポートによると、ESG関連の取引は、2011年の約5,700件から2021年には過去最高の約9,200件と、60%増加しています。M&A取引全体の件数に占めるESG関連の割合は、2001年の12%から2011年に17%、2021年には22%に上昇しました。

グリーンM&Aの件数は増加、環境関連以外の取引より大きな価値を生み出す

特に環境関連取引(グリーンM&A)は、M&A取引全体の件数に占める割合は小さいものの、近年増加しています。 2011年から2019年にかけては取引全体の5%前後で推移していましたが、2021年には6%に上昇しました。2019年から2021年にかけての20%の増加は、グリーンM&Aが環境問題の解決に向けた変革における戦略的な手段として注目を集めつつあることを示しています。

グリーンM&Aは、エネルギー転換の最前線にある産業や新興国において特に急速に拡大しています。過去10年間、エネルギー・ユーティリティ業界はグリーンM&Aのシェアが最も高く、2011年の20%から2021年には40%近くまで拡大しています。また、2021年のグリーンM&Aの割合が最も高い地域は中東でした。中東における取引の10%以上が環境関連であり、アジア太平洋地域が約8%で続きます。

グリーンM&Aは、普及とともに取引価額の拡大が進んでいます。平均買収価額は、過去3年間で市場全体の平均を約7%上回り、業種によっては20%から30%のプレミアム(上乗せ幅)が乗っています。しかし、BCGの分析によると、グリーンM&Aは発表時およびその後の2年間において、環境関連以外の取引よりも大きな価値を生み出しています。M&A公表日前後7日間の累積超過収益率(CAR)を分析した結果、グリーンM&AのCARの中央値(1.0%)は、環境関連以外の取引(0.6%)よりも高いことが明らかになりました。また、2年間の相対TSR [注1](株主総利回り)の中央値は、グリーンM&Aの0.6%が環境関連以外の取引(0.2%)を上回っていることも分かりました。短期的にも長期的にも、グリーンM&Aに対して適切なアプローチを取る企業はより大きいリターンを得るといえます。

[注1]Relative Total Shareholder Return: 当該取引をベンチマーク・インデックスと比較したTSR。詳しくは調査レポート下部の「How We Track M&A Activity by Year」をご参照ください。

■ 調査レポート

The 2022 M&A Report

■ 日本における担当者

加来 一郎 マネージング・ディレクター & シニア・パートナー
BCGプリンシパル・インベスター&プライベート・エクイティグループのアジア・パシフィック地区リーダー、およびコーポレート・ファイナンス&ストラテジーグループのコアメンバー。
慶應義塾大学経済学部卒業。住友商事株式会社、外資系コンサルティングファーム、PEファンドを経て現在に至る。

■ 本件に関するお問い合わせ

ボストン コンサルティング グループ マーケティング 井上・福井・天艸
Tel: 03-6387-7000 / Fax: 03-6387-0333 / Mail: press.relations@bcg.com

ボストン コンサルティング グループ(BCG)

BCGは、ビジネスや社会のリーダーとともに戦略課題の解決や成長機会の実現に取り組んでいます。BCGは1963年に戦略コンサルティングのパイオニアとして創設されました。今日私たちは、クライアントとの緊密な協働を通じてすべてのステークホルダーに利益をもたらすことをめざす変革アプローチにより、組織力の向上、持続的な競争優位性構築、社会への貢献を後押ししています。

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日本では、1966年に世界第2の拠点として東京に、2003年に名古屋、2020年に大阪、京都、2022年には福岡にオフィスを設立しました。