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BCG、企業のカーボンニュートラル(CN)経営の成熟レベルを初調査:日本企業の多くは実行段階へ移行も、社内基盤の構築に課題

CN経営を網羅・統合的に評価する「BCGカーボンニュートラル・インデックス」を開発

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経営コンサルティングファームのボストン コンサルティング グループ(以下、BCG)は、東証プライム上場企業を対象に、企業のカーボンニュートラル(CN)経営の成熟レベルを分析する調査を初めて実施しました。調査は2022年8月~10月の期間に実施され、231社から有効回答を得ました。調査ではBCGが独自に開発した指標「BCGカーボンニュートラル・インデックス」を用い、日本企業のCN経営に関する取り組みを網羅・統合的に診断しています。

5つの観点と31の項目について分析・評価 日本企業の多くがCN経営への取り組みを本格化

CN化に向けた取り組みが地球規模で加速する中、企業の経営陣は複雑かつ不確実な事業環境の下、難易度の高い意思決定を求められています。「BCGカーボンニュートラル・インデックス」は、CN経営に向けた検討を支援するために開発された指標です。CN経営に関する5つの観点(「①経営戦略を示す」「②要件を充たす」「③競争優位性を構築する」「④新事業機会を探索する」「⑤実現するための基盤を構築する」)と、それらを詳細に分解した31の評価項目について、レベル1(CN経営への準備・部分的着手段階)~レベル4(CN経営のフロントランナー)の4段階で成熟度を診断します。

今回の調査では、日本企業の平均は「レベル2(CN化への取り組みに全社的に着手)」と診断されました(図表1)。日本企業の多くがこの数年でCN化への全社的な取り組みを本格化させ、CN経営の必要性を議論・計画する段階から、着手、実行段階へと移行していることがうかがえます。

喫緊の課題は、人材や組織、意思決定プロセスなど社内基盤の整備

日本企業は、「経営戦略を示す」「要件を充たす」などのスコアは高い一方、人材や組織、意思決定プロセスなど「実現するための基盤を構築する」のスコアが最も低くなっています。社内基盤の整備不足は、戦略や計画を実行に移す際にボトルネックとなる可能性があります。この点を含めた課題の克服には、グローバル先進企業や日本の一部先進企業がたどってきた道のりをベンチマークし、CN経営にあたり重要なポイントを効率よく押さえることが近道となります。

各観点でバランスのよいグローバル先進企業と比較し、日本企業はルールメイキングなどで後れ

一方で、グローバル先進企業の平均(注1)は「レベル3(CN化に向けた取り組みを加速)」と診断され、日本企業はまだ大きく差をつけられていることも明らかになりました(図表2)。詳細な項目別にみると、日本企業は特に「ルールメイキング」や「意思決定プロセス」、「ITシステム基盤」の領域で大きく後れをとっています。

調査を担当したBCG東京オフィスのマネージング・ディレクター&パートナー、丹羽 恵久は以下のようにコメントしています。「日本企業は、CN経営に向けた計画をひとまず策定してみるという段階から、実行に注力する段階へと移行してきています。一方、グローバル先進企業は5つの観点それぞれでバランスよくスコアを取っていることから、戦略と計画の策定・実行・検証によって社内基盤を整備するPDCAサイクルを回しながら改善を図り、CNにおける競争力を高めつつあると考えられます。日本企業もまずは1周目のサイクルを早期に回し、さらに2、3周目を回して先進企業に追いつくことが求められます。そのためには、特に課題となっている人材・組織・ガバナンスなどの基盤構築の強化を含め、必要な財務・人材面のリソースを『待ったなし』で集中的に投下できるよう、経営層のコミットが重要になると考えています」

温室効果ガス排出量が大きい産業ほどCN化に向けた取り組みが進んでいる

また、レポートでは各産業のCN経営の成熟レベルも診断しています(図表3)。日本企業の平均である「レベル2」と診断された産業の中でもエネルギー産業のスコアが最も高く、鉄鋼・非鉄・鉱業、化学、輸送用機器などの産業がそれに続きました。温室効果ガス(GHG)排出量が大きい産業ほど、抜本的な事業戦略や商品戦略の変革が求められていることを背景に、取り組みが進んでいると分析しています。

(注1)BCGの過去の知見に基づきピックアップした先進企業について、公開情報を元にスコア評価したもの

■ 調査レポート

BCGカーボンニュートラル・インデックス レポート

■ 調査概要

東証プライム上場企業231社を対象に、「BCGカーボンニュートラル・インデックス」に基づいて評価

  • 実施時期: 2022年8月~10月
  • 評価方法: 5つの観点「①経営戦略を示す」「②要件を充たす」「③競争優位性を構築する」「④新事業機会を探索する」「⑤実現するための基盤を構築する」と、それらを詳細に分解した31の評価項目について、「レベル1:CN経営への準備・部分的着手段階」「レベル2:CN化への取り組みに全社的に着手」「レベル3:CN化に向けた取り組みを加速」「レベル4:CN経営のフロントランナー」の4段階で成熟度を診断

■ 担当者

丹羽 恵久 マネージング・ディレクター & パートナー
BCG気候変動・サステナビリティグループ、パブリックセクターグループの日本リーダー。BCGハイテク・メディア・通信グループ、社会貢献グループ、および組織・人材グループのコアメンバー。
慶應義塾大学経済学部卒業。国際協力銀行、欧州系コンサルティングファームを経て現在に至る。

平 慎次 マネージング・ディレクター & パートナー
BCG気候変動・サステナビリティグループ、およびエネルギーグループのコアメンバー。
京都大学工学部卒業。東京電力ホールディングス株式会社(旧東京電力株式会社)を経て現在に至る。

■ 本件に関するお問い合わせ

ボストン コンサルティング グループ マーケティング 井上・福井・天艸
Tel: 03-6387-7000 / Fax: 03-6387-0333 / Mail: press.relations@bcg.com