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BCG、職場における包摂性を測定するBLISSインデックスを開発: 包摂性を重視することで、離職リスクが半減する可能性

LGBTQや障がいのある人が「ありのままの自分を出せること」や経営陣の多様性が重要

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【参考資料】

(本資料は、2023年2月22日に米国で発表されたプレスリリースの抄訳です)

ボストン発、2023年2月22日 ―― 経営コンサルティングファームのボストン コンサルティング グループ(以下、BCG)は、日本を含む世界16カ国、さまざまな業界にわたる27,000人以上の従業員への調査結果をもとに、職場に留まる意思決定に重要な「包摂性(インクルージョン)の実感」と、それを促す「職場における要因」を特定するBLISSインデックス[注1]を開発しました。その分析から得られた知見をまとめたレポート「Inclusion Isn’t Just Nice. It’s Necessary」(以下、レポート)を発表しました。

包摂性の改善は企業にも従業員にも大きな価値がある

職場における包摂性は、その定義や測定の難しさから、企業のDEI[注2]活動の中では優先順位が低くなる傾向にあります。レポートによると、従業員の「包摂性の実感」(大切にされ尊重されている/自分の意見が重要だと思える/幸福感やモチベーション、自分の居場所がある/心身の健康をサポートされていると感じること)を改善することで、離職リスクの低減などの形で、企業にも大きな価値がもたらされる可能性があります。例えば、BLISS インデックスのスコアが下位4分の1から中央値に上昇した企業は、従業員の幸福感、エンパワーメント、ポテンシャルを発揮する能力を30%ポイント近く高め、離職リスクを半減できる可能性があります。

「職場でありのままの自分を出せること」は包摂性の実感と強い関連性がある

BCGは「職場でありのままの自分を出せること」を、「性的指向、人種、健康状態、社会経済的背景、生活環境など、従業員が重要視する自身のアイデンティティを周囲に共有できると感じること」と定義しています。レポートによると、ありのままの自分でいられることは、全ての従業員にとって包摂性の実感と強く結びついています(図表1)。ありのままの自分を出せる従業員は、より幸せを感じ、ベストを尽くす意欲があり、自分の意見が尊重されていると感じており、離職する可能性が半分以下ということもわかっています。

また、全てのグループの従業員において、「職場でありのままの自分を出せる」と感じている人は、そう思っていない人に比べて、BLISSインデックススコアが2倍高くなりました(図表2)。

加えて、職場で本来の自分を隠す必要があると感じると、「包摂性の実感」の格差が広がることも明らかになりました。同僚にカミングアウトしているLGBTQの従業員の73%が「職場でありのままの自分でいられる」と感じているのに対し、カミングアウトしていない従業員ではその割合は53%でした。

包摂性を促進する4つの要素

レポートでは調査結果をもとに、業界や国を問わず、全ての従業員の職場における包摂性の実感を高めるために重要な要素について解説しています。

  • 経営陣のコミットメント: 経営陣がDEIに取り組んでいる場合、84%の従業員が評価、尊重されていると感じているのに対し、取り組んでいないと見なされている企業ではその割合は44%にとどまっています。非白人(BIPOC[注3])、LGBTQ、障がいのある人の約3分の1が、その企業の組織文化に包摂性が欠けていることを理由に、職務に応募しない、またはオファーを受け入れないと選択したことが明らかになっています。
  • 経営陣の多様性: 経営陣に多様性がある場合、85%の従業員が職場に帰属意識をもっているのに対し、多様性がない企業ではその割合は53%となっています。女性、非白人、障がいのある人、LGBTQなどにとどまらず、年齢、社会経済的背景、教育水準、仕事以外での育児・介護の状況なども考慮する必要があります。
  • ダイレクトマネジャー(直属の上司)のコミットメント: 経営陣がDEIに取り組んでいる場合、83%の従業員が「直属の上司もDEIに取り組んでいる」と回答、86%が「直属の上司が心理的に安全な環境をつくっている」と答えています(経営陣がDEIに取り組んでいない企業では、それぞれ17%、29%)。調査によると、年配の従業員、職位の低い従業員、恵まれない社会経済的背景をもつ従業員は、職場で心理的安全性を最も感じにくく、直属の上司の行動は彼らの実感に影響を与える可能性があります。
  • 差別や偏見のない、誰もが尊重される環境: 差別や偏見、相手を尊重しない行動を目にしたり、経験したりした従業員は、仕事を辞める可能性が約1.4倍高くなります。経営陣がDEIに取り組んでいると信じることができた場合、従業員が安心して声を上げられる可能性が33%ポイント高くなります。こうした行動に対して発言する勇気をもてたり、対処の結果を確認したりすることができれば、職場で本来の自分らしさを発揮しやすくなり、より包摂性を感じるようになるのです。

レポートの執筆をリードしたBCGシカゴ・オフィスのマネージング・ディレクター & パートナー、Gabrielle Novacekは次のようにコメントしています。「BLISS インデックスは、包摂性が人々の仕事に対する意思決定に直接的な影響を与えることを明らかにしました。核となるのは経営陣です。職場における『包摂性の実感』を促進し、形づくるうえで、経営陣は自身が思っている以上に深い役割を担っています」

レポートでは、従業員の幸福感、ウェルビーイング、定着率を向上させるために、リーダーが焦点を当てるべき包摂性に関する取り組みについて詳しく解説しています。

[注1]BLISS=Bias-free, Leadership, Inclusion, Safety, and Support インデックスの詳細は「調査概要」をご参照ください。
[注2]ダイバーシティ(多様性)・エクイティ(公正性)・インクルージョン(包摂性)
[注3]黒人(Black)、先住民(Indigenous)、非白人(People of Color)

■ 調査レポート

Inclusion Isn’t Just Nice. It’s Necessary

■ 調査概要

BCGは、職場における包摂性の実感について、可能な限り主観を排除し数値化することを目的に、世界27,000人以上を対象とした調査を行いました。
期間: 2022年夏~秋
対象: 従業員1,000人以上の企業に勤務するフルタイムおよびパートタイムの従業員27,000人以上
対象国: オーストラリア、ブラジル、中国、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、インド、イタリア、日本、ノルウェー、南アフリカ、スペイン、スウェーデン、英国、米国の16カ国

調査結果から、どの要素が包摂性の実感を強めるのかを分析しました。例えば「職場で評価されていると感じる」と答えた回答者は包摂性の実感が強いことが分かりました。また回答間の相関関係を分析し、離職リスクに大きな影響を与える要素を特定しました。これらのアプローチによって開発されたのがBLISSインデックスです。BLISSインデックスはスコアが高いほど包摂性の実感が強く、1~100で表され、中央値は66となりました。

■ 日本における担当者

折茂 美保 マネージング・ディレクター & パートナー
BCG社会貢献グループの日本リーダー。
東京大学経済学部卒業。同大学大学院学際情報学府修士。スタンフォード大学経営学修士(MBA)。

竹内 達也 マネージング・ディレクター & パートナー
BCG組織・人材グループの日本リーダー。
東京大学教養学部卒業。同大学大学院総合文化研究科修士。ドイツ銀行を経て現在に至る。

本件に関するお問い合わせ

ボストン コンサルティング グループ マーケティング 小川・福井・天艸
Tel: 03-6387-7000 / Fax: 03-6387-0333 / Mail: press.relations@bcg.com

ボストン コンサルティング グループ(BCG)

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日本では、1966年に世界第2の拠点として東京に、2003年に名古屋、2020年に大阪、京都、2022年には福岡にオフィスを設立しました。