日本における日常的な利用率、AIエージェントの導入率はともに世界平均を下回る
【プレスリリース】
(本資料は米国で発表された報道資料の抄訳です)
ボストン発、2025年6月26日 ―― 経営コンサルティングファームのボストン コンサルティング グループ(以下、BCG)は、職場におけるAI活用に関する意識調査に基づくレポート「 AI at Work 2025: Momentum Builds, But Gaps Remain 」(以下、レポート)を発表しました。調査は日本を含む世界11の国・地域において、経営幹部から従業員までを含む1万600人以上を対象に行われました。BCGのデジタル領域に特化した専門家集団BCG Xが実施し、今年で3回目となります。
生成AIの日常的な利用率は世界平均72%、日本は51%と低迷
調査によると、全回答者の72%が日常的にAIを使用しており[注1] 、世界全体としてAIの導入は進展していることがわかりました。しかし職位別に見ると、一般従業員のうち日常的にAIを使用する人の割合は51%にとどまり、昨年の52%から横ばいの結果になっています。また、日常的にAIを使用する人の割合はインド(92%)、中東諸国(87%)などで高く、グローバルサウスの国々での利用率は引き続き高い水準にあります。対して、日本では51%と大きく差がつきました(図表1)。
一方、自動化による雇用への影響に対する懸念も大きく、全体で41%の回答者が「今後10年で自分の仕事がなくなる可能性がある」という不安を抱いていることが明らかになりました。特に利用率が上位の国ほど、この傾向は強くなっています(図表2)。
AIの活用を促進するにはトレーニングやツール、経営リーダーからの支援が重要
レポートでは、AI活用の促進にあたり、重要な施策として以下の3つを挙げています。
- 十分なトレーニングの提供: AIの使い方について「十分なトレーニングを受けた」と感じている回答者はわずか36%にとどまった。特に、対面式かつ助言を受けられるコーチング形式で5時間以上のトレーニングを受けた人は、AIを日常的に活用する可能性がより高まる
- 適切なAIツールの提供: 回答者の半数以上(54%)が「正式に許可されていなくてもAIツールを使う」とした(図表3)。特にZ世代[注2]やミレニアル世代[注3]は、会社の許可がなくてもAIを利用しようとする可能性が高い。このように、従業員が無断で業務にAIツールを使用する「シャドーAI」の問題は、企業にとってセキュリティリスクの増大を招く
- 経営リーダーの明確な支援: 一般従業員のうち、「自社の経営層はAIの使用に関して十分な指針を示してくれている」と感じている人はわずか25%となった。一方で、経営リーダーが積極的に関与している組織では、AIの利用率も、AIの影響に対し前向きな従業員の割合も明らかに高い傾向がある
AIエージェントが今後の成功に不可欠との見方が強まる一方、日本での導入は出遅れ
調査によると、回答者の4分の3以上がAIエージェント(自律的なタスクマネジメントが可能なデジタルアシスタント)が今後の成功に不可欠だと考えています。しかし、現時点でAIエージェントが業務フローに統合されていると回答した人の割合は世界平均で13%にとどまり、日本では7%とさらに下回りました(図表4)。また、その仕組みを理解していると答えた人も全体の3分の1となっています。
一方で、AIエージェントの仕組みについて理解している人ほど脅威を感じる割合は低くなり、AIエージェントを「競合」ではなく「協働するパートナー」として捉えていることも明らかになっています。
AIによる本質的な変革へと踏み出そうとする経営リーダーに向け、レポートでは「AI活用によって生まれた価値を可視化する」「人材投資を通じて業務フローを再設計し、AIの価値を最大限に引き出す」「AIエージェントについてA/Bテストなど定量的な検証を徹底し、経験曲線を加速させる」といった要件を提示しています。
BCG Xで日本における生成AIトピックのリーダーを務めるマネージング・ディレクター&パートナーの 中川 正洋 は次のように述べています。「日本企業においても積極的なAI活用を進める姿勢は見られますが、グローバル企業がより速いスピードで活用を推進しており、徐々に差が開き始めています。また、生成AIの活用環境を整備しても、実際の活用が進まず苦慮している企業も少なくありません。日本においてAI活用が進んでいる企業は、経営トップのサポートや後押しと、現場レベルでの成功事例の確立という両輪がうまく機能しています。世界的な動きも踏まえると、AIを日常的に活用するだけでなく、業務プロセスや顧客への提供価値を変革するような取り組みにいかにつなげられるかが鍵といえます」
[注1] AIを週に数回以上、または毎日使用する場合を「日常的に使用する」と定義
[注2] 1997〜2012年生まれ
[注3] 1981〜1996年生まれ
■ 調査レポート
「 AI at Work 2025: Momentum Builds, But Gaps Remain 」
■ 日本における担当者
中川 正洋
マネージング・ディレクター & パートナー
日本における生成AIトピックのリーダー。BCG X、BCGパブリックセクターグループ、およびテクノロジー&デジタルアドバンテッジグループのコアメンバー。
早稲田大学理工学部卒業。同大学大学院理工学研究科修了。グローバルコンサルティングファームなどを経て現在に至る。
■ BCG X(エックス)について
BCG Xは、テクノロジーやデジタルを駆使したビジネス、およびプロダクトビルディングを担う、BCGの専門家集団です。
BCG Xは、BCGの産業や経営機能に対する深い専門知識を活用しつつ、高度な技術的知識と意欲的な起業家精神を結集して、企業の大規模なイノベーションの実現を支援します。80を超える都市に約3,000人のテクノロジスト、データサイエンティスト、エンジニア、デザイナー、プロダクトマネジャー、アントレプレナーを擁し、世界で最も重要な課題と機会に対応するプラットフォームとソフトウエアを構築・設計しています。
私たちのエンドツーエンドのグローバルチームは、既存の産業・機能別プラクティスの枠を超え、クライアントと密接に連携しながら、新しい可能性を切り拓いていきます。私たちは、大胆でディスラプティブ(破壊的)な未来の製品、サービス、ビジネスをともに創り上げていきます。
■ 本件に関するお問い合わせ
ボストン コンサルティング グループ マーケティング 中崎・中林・河西
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