
テクノロジーはサステナビリティ向上への道のりをどう加速するか
先進的なテクノロジーは、サステナビリティへの取り組みの大きな加速力となりえます。しかし、サステナビリティで優位性を構築するには、テクノロジーやデータをごく初期の段階から戦略的に組み込む必要があります。
温暖化ガスの排出量を正確に測定・削減することは困難で、コストも大きいため、多くの企業は取り組みを進めることができずにいます。BCGが世界各地の企業1,290社を対象に実施した調査によると、85%の企業が排出量削減に関心を持っているものの、過去5年間で自社の目標を達成できた企業は11%にとどまりました。
このような状況において、AI(人工知能)は大きな変化をもたらします。AIの活用により、2.6~5.3ギガトンの温暖化ガス(二酸化炭素換算)の削減が可能です。また、BCGの調査では、企業がAIをサステナビリティへの取り組み全般に活用したとき、収益向上やコスト削減を通じて生み出される潜在的な価値は、2030年までに約1兆~3兆ドルに達すると推計されます。
(詳細は論考 「温暖化ガス排出量削減にAIのパワーを活用する」 をご参照ください)
AIは非常に複雑なシナリオ下での意思決定において大きな役割を果たします。企業が二酸化炭素排出量を大幅に削減するためには、これまでの仕事のやり方を根底から覆すような、複雑で難しい決断をしなければなりません。サプライチェーンを再設計したり、サービス提供モデルを対面から完全なリモートに変更したりすることがその一例です。このような状況では変数があまりにも多く、ミスを犯した場合のコストが高すぎるため、分析を重視しすぎてアクションを起こせない「分析麻痺」が現実的なリスクとなります。AIや高度なアナリティクスを活用して意思決定をサポートできるようになれば、企業はより迅速に、より大胆に行動することが可能になります。意思決定でAIを活用するには、きわめて高度なデータ機能が求められるのみならず、意思決定者が考え方を完全に変え、時間をかけてAIに慣れる必要がありますが、これは容易なことではありません。
AIだけでなく、デジタル関連の全般的な組織能力も不可欠です。社内では、データの収集・集約・分析に関わる組織能力や高度なアーキテクチャの構築が欠かせません。
また、デジタルを活用してサプライチェーンを脱炭素化することも重要な視点です。多くの企業、特に消費者向け事業を営む企業にとって、サプライチェーンにおけるエンドツーエンドの排出量は、自社の事業活動による排出量よりはるかに多いためです。
BCGとWEF(世界経済フォーラム)の共同調査では、サプライチェーンを完全に脱炭素化したとしても、中期的には最終消費者価格の上昇を1~4%にとどめられることが分かりました。サプライチェーン全体の排出量の把握や、川上企業との協働は容易ではありませんが、企業は、製品を再設計し、調達戦略を見直し、自社組織のガバナンスを変えることで、大きな恩恵を受けられます。
(詳細は論考「サプライチェーンの脱炭素化が気候変動との戦い方を変える」をご参照ください)
先進的なテクノロジーは、サステナビリティへの取り組みの大きな加速力となりえます。しかし、サステナビリティで優位性を構築するには、テクノロジーやデータをごく初期の段階から戦略的に組み込む必要があります。
BCGとWEFの共同調査により、サプライチェーンの脱炭素化はわずかなコストで達成できることが分かりました。しかし、サプライチェーン全体の排出量の把握や、川上企業との協働は簡単なことではありません。企業は、製品を再設計し、調達戦略を見直し、自社組織のガバナンスを変える必要があります。
石油・ガス産業は温暖化ガス排出量の削減に大きな課題を抱えていますが、高度なアナリティクスやAI、機械学習を活用したデジタルツールによって、企業は脱炭素化への最速かつ効果的な道筋を見出すことができます。(英文)
BCGの調査によると過去5年間で温暖化ガス排出量削減目標を達成できた企業は11%にとどまり、正確な排出量を測定できないことが最大の障害として挙げられています。この課題の克服にAIが大きな力を発揮します。BCGが開発したツールCO2 AIは排出量の正確な測定、シミュレーション、追跡、最適化に役立ちます。(英文)
膨大なデータから適切な行動を導き出すAIは、企業の温暖化ガス排出量の削減とコスト削減の両方を実現できる可能性があります。本稿では、サステナビリティへの取り組みにおいて、企業がAIのメリットを最大限に得るための3つのアプローチを提示します。
すべてのアジェンダを見る
エコシステムを通じたイノベーションとコラボレーション