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公正でインクルーシブな移行の実現

 

「公正でインクルーシブな移行」の必要性

脱炭素社会への移行においてはSDGsの精神「誰一人取り残さない」も重要な観点となります。社会全体がジェンダーや人種、地域、経済的背景などを含むさまざまな側面での公平性に配慮した「公正でインクルーシブな移行」を目指すことが求められています。

気候変動問題とジェンダー格差

気候変動により女性が男性に比べ大きな影響を受けることは広く知られた事実です。災害などによる健康上の影響を受けやすく、また水や食料の確保を担っていることが多いため、温暖化の進行でその難易度が上がると生活や教育に大きなしわ寄せが来ます。

また、あまり知られていないことですが、現行の気候変動対策では女性が取り残されてしまう可能性があります。BCGの分析では、現在の傾向が続くと気候変動対策によりジェンダー公正、ひいてはジェンダー平等の達成が15〜20年遅れる可能性があることが明らかになっています。これは主に、急成長するグリーン経済(農業、グリーン消費財、自動車や工業製品のグリーン分野、廃棄物処理、再生可能エネルギーなどの分野)に女性の参加者が少ないことから、新たに生まれる職務への就業、再教育を通じた新しいスキルの習得、グリーン技術を持つスタートアップへの資金提供などの面で女性が不利になるためです。

SDGsの精神「誰一人取り残さない」をまっとうするためにも、「公正な移行」に向け気候変動対策にジェンダーの観点を取り込むことが欠かせません。具体的には、女性の農業従事者に資金を提供し、再教育を行い、土地や保険にアクセスできるようにすること、また女性のSTEM(Science、Technology、Engineering、Mathematics)スキルの向上や環境関連のアントレプレナーシップへの投資なども考えられます。女性が気候変動対策に全面的に参加できるようにすることで、コロナ禍がジェンダーの公平性に与えた悪影響を覆し、進歩を加速できます。

(詳細は論考「気候変動対策には「ジェンダーのレンズ」が必要だ(英文)」をご参照ください)

気候変動規制がもたらしうる格差

エネルギーの脱炭素化が消費者に与える影響も看過できません。気候変動対策のための規制は、一般家庭にも大きな経済的負担を強いることになります。分散型エネルギーシステムなど、グリーンテクノロジーへの切り替えを望まない、あるいはできない場合には、特に大きな影響を受けるでしょう。企業のように公的な支援策を受けられないにもかかわらず、炭素価格や電気料金、物価の上昇の影響を受けることになるからです。

特に、所得の低い家庭では、収入に占める電気代や暖房代の割合が高いため、これらの追加の負担がより重くのしかかってきます。たとえばドイツでは所得の低い一般家庭は世帯収入の1.5〜2.3%に相当する追加の経済的負担を強いられると試算されます

負担を公平にするためには、社会的な補償手段により追加の負担を減らす必要があります。

さらに、脱炭素エネルギーへの移行にともない、化石燃料に関わる産業に携わってきた人々がこれまでの職を失う可能性もあります。こうした人々が必要な再教育を受けられる機会を準備することが求められます。

公正な移行のための制度

公正な移行を下支えする制度や枠組みにも視野を広げなければなりません。今後さまざまな気候変動対策が本格的に展開していくなかで、国境炭素調整措置、国を越えた炭素貯留(CCS)のネットワーク、水素など新たな燃料のバリューチェーンなど、さまざまな領域で多国間での調整を迫られる局面が出てくると考えられます。

また、新興国を含む特定の国々、弱い立場にある人々が不利にならない、公平性が担保された枠組みをつくることが求められています。たとえば、国境炭素税の税収の教育分野強化への充当、CCSの国際的な価格基準の設定、経済的基盤の弱い人々に対する、脱炭素への移行にともなう負担を軽減する補助の実施、などが考えられます。

このトピックに関するBCGの論考など

Why Climate Action Needs a Gender Focus - rectangle

気候変動対策には「ジェンダーのレンズ」が必要だ

現行の気候変動対策は、女性を置き去りにする可能性があります。しかし、気候変動との戦いにしっかりと女性を巻き込むことができれば、ジェンダー公正の促進と、気候変動対策の前進の双方に良い効果が期待できます。

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気候変動という複雑な問題への新たなアプローチ

気候変動対策の実行に向けて社会全体を動かすために、私たちは個々の主体の行動原理を理解したうえで、他の主体の行動を変えられるグループを特定し、負の行動サイクルを、対策を加速する正のサイクルへと反転させなければなりません。(英文)

Building a Climate-Resilient, Low-Carbon, Job-Rich Africa - rectangle

アフリカをレジリエント、低炭素、雇用機会豊富な大陸に

気候変動はアフリカ大陸の大きな脅威となっています。国際社会がアフリカ諸国と協働し、大規模な投資や先進技術の活用により、低炭素型の社会経済開発の基盤を構築することで、アフリカはレジリエントな社会を構築できるだけでなく、グリーンエネルギーの産出地として発展する可能性があります。(英文)

このトピックのエキスパート

 
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