Winning the Race to Net Zero: The CEO Guide to Climate Advantage

気候変動対策は過去の予測よりも速いスピードで進展。ネットゼロに向けた早期の取り組みにメリット~BCG、WEF共同レポート

ネットゼロへの移行を通じた競争優位性構築について解説

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(本資料は米国で発表された報道資料の抄訳です)

ボストン発、2022年1月17日 ―― 経営コンサルティングファームのボストン コンサルティング グループ(以下、BCG)は、世界経済フォーラム(WEF)との共同レポート「Winning the Race to Net Zero: The CEO Guide to Climate Advantage」を発表しました。温室効果ガス排出量ネットゼロに関するWEFとの共同レポートの発行は、2021年1月に続き3度目となります。レポートでは、地域・業界横断で実施した大企業のCEOや経営陣約20名へのインタビューなどを含む多角的な調査をもとに、ネットゼロに向けた課題に着手することにどのようなメリットがあるのか、また、気候変動対策のリーダーとなることがどのように競争優位性構築につながるのか、解説しています。

気候変動対策進展のペースや規模の過小評価はリスクにつながる

近年、多くの国や企業が気候変動という課題に向き合い始めています。排出量ネットゼロを宣言する企業数は飛躍的に増えており、世界2,000社以上の企業がSBT(注1)(科学に基づく削減目標)イニシアチブによる認定を受けています。認定企業の数は2015年には116社であったことを踏まえると、年間65%の増加率で増加しています。

しかし、いまだ経営者の多くは気候変動に関連する変化のペースや規模を過小評価し、保守的に行動しています。レポートでは、その結果、座礁資産やビジネスモデルの陳腐化というリスクを負うことにつながると指摘しています。「変化は、多くの企業や人々が認識しているよりもはるかに速いスピードで起こっています。たとえば、2020年時点の2030年の太陽光発電容量の予測値は、2002年時点の予測値の36倍、単価の予測値は同3分の1となっています」と、レポートの共著者でBCG気候変動・サステナビリティセンター(Center for Climate & Sustainability)のマネージング・ディレクター & パートナー、Patrick Herholdはコメントしています。「このような変化のペースや規模を過小評価する企業は、気候変動がビジネスモデルや製品、企業価値に及ぼす影響を大きく見誤る危険性があります」

注1:Science-based Targets。パリ協定の水準に整合する、企業における温室効果ガス排出削減目標。イニシアチブは世界資源研究所(WRI)、世界自然保護基金(WWF)などにより設立・運営されており、目標を設定する企業の認定を実施している。

ネットゼロに向けた課題に着手するメリット

レポートでは、企業がネットゼロに向けた課題に着手する主なメリットと、気候変動対策のリーダーとなることが、なぜ競争優位性構築につながるのか、以下の観点で解説しています。

  • 人材確保。従業員、求職者の約半数がサステナビリティを重視している。
  • 成長市場での事業展開。環境配慮型製品の売上高は、従来の製品より最大25%ポイントほど高い年平均成長率を示している。
  • コストと排出量の削減。ほとんどの企業が、削減が求められる排出量の少なくとも3分の1を、実質ゼロコストで削減することができる。
  • リスク低減。EUの国境炭素調整措置を考慮すると、早期に脱炭素化した企業は国境炭素税の負担が軽減するため、脱炭素化が遅れた企業よりも2030年のEBITマージン(注2)の予測値が2~12%ポイント高い。
  • より有利な資金調達。サステナビリティのリーダー企業の資本コストは、遅れをとっている企業より平均100ベーシスポイント低い。
  • 高い株主価値の実現。サステナビリティのリーダー企業のTSR(注3)(株主総利回り)は、遅れをとっている企業より平均3%ポイント高い。

またレポートでは、気候変動対策が近年大きく進展した主な要因は集団的な行動ではなく、先駆的な企業が単独でとった大胆な行動だったと指摘しています。市場に変革をもたらした具体的な事例として、テスラやメルセデスなどを紹介しています。

WEFの気候変動対策プラットフォーム(Climate Action Platform)の責任者であるAntonia Gawelは、「気候変動対策を加速させるためには、民間企業によるリーダーシップが不可欠です」とコメントしています。「COP26では重要なコミットメントがなされ、気候変動という課題がさらに世界的に注目されるようになりました。2022年のダボス会議では、ビジネスリーダーが引き続き取り組みを拡大し、気候変動のリスクをビジネスの中核に位置づけ、数年のうちにはコミットメントがビジネスの変革や投資につながるよう期待しています」

注2:EBIT(Earnings Before Interest and Taxes、利払い・税引き前損益)マージンとは、利息と税金の影響を除いた本業の収益力を測る指標。
注3:TSR(トータル・シェアホルダー・リターン、株主総利回り)とは、企業価値創造の測定指標。ある一定期間における配当と株価の値上がりの総利回りで、株主にとっての投資収益性を示す。

■ 調査レポート

Winning the Race to Net Zero: The CEO Guide to Climate Advantage
ダイジェスト版はこちら
BCG-WEF Project: The Net-Zero Challenge

過去に発行されたレポートはこちら
Net-Zero Challenge: The Supply Chain Opportunity」(2021年1月)
The Net-Zero Challenge: Fast-Forward to Decisive Climate Action」(2020年1月)

■ 日本における担当者

丹羽 恵久 マネージング・ディレクター & パートナー
BCGパブリック・セクターグループの日本リーダー。BCGジャパンのカーボンニュートラル・気候変動領域を統括。
ハイテク・メディア・通信グループ、社会貢献グループ、および組織・人材グループのコアメンバー。慶應義塾大学経済学部卒業。国際協力銀行、欧州系コンサルティングファームを経て現在に至る。

折茂 美保 マネージング・ディレクター & パートナー
BCG社会貢献グループの日本リーダー。
パブリック・セクターグループ、およびハイテク・メディア・通信グループのコアメンバー。東京大学経済学部卒業。同大学院学際情報学府修士。スタンフォード大学経営学修士(MBA)。

■ ダボス会議2022について

世界経済フォーラム(WEF)は50年以上続く、官民協力のための国際機関です。ダボス会議2022は官民のリーダーたちが集まり、最も緊急性の高い国際課題についてそれぞれの見通しや視点、計画を共有する場です。ダボス会議はプラットフォームを提供することで、世界共通課題の解決と、持続可能で包括的な未来を描くために必要なパートナーシップの構築を促進します。
プログラムの詳細とオンラインセッションの視聴は下記リンクをご参照ください。
https://www.weforum.org/events/the-davos-agenda-2022 

■ 本件に関するお問い合わせ

ボストン コンサルティング グループ マーケティング 直江・福井・天艸
Tel: 03-6387-7000 / Fax: 03-6387-0333 / Mail: press.relations@bcg.com

ボストン コンサルティング グループ(BCG)

BCGは、ビジネスや社会のリーダーとともに戦略課題の解決や成長機会の実現に取り組んでいます。BCGは1963年に戦略コンサルティングのパイオニアとして創設されました。今日私たちは、クライアントとの緊密な協働を通じてすべてのステークホルダーに利益をもたらすことをめざす変革アプローチにより、組織力の向上、持続的な競争優位性構築、社会への貢献を後押ししています。

BCGのグローバルで多様性に富むチームは、産業や経営トピックに関する深い専門知識と、現状を問い直し企業変革を促進するためのさまざまな洞察を基にクライアントを支援しています。最先端のマネジメントコンサルティング、テクノロジーとデザイン、デジタルベンチャーなどの機能によりソリューションを提供します。経営トップから現場に至るまで、BCGならではの協働を通じ、組織に大きなインパクトを生み出すとともにより良き社会をつくるお手伝いをしています。

日本では、1966年に世界第2の拠点として東京に、2003年に名古屋、2020年に大阪、京都、2022年には福岡にオフィスを設立しました。