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M&A市場はコロナ危機から徐々に回復~BCG調査

不透明さの増す環境下で、「オルタナティブディール」の重要性が高まる

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ミュンヘン発、2020年9月29日 ―― 経営コンサルティングファームのボストン コンサルティング グループ(以下、BCG)は、2020年版M&Aレポート “The 2020 M&A Report: Alternative Deals Gain Traction”(以下、レポート)を発表しました。今回のレポートでは、コロナ危機下のM&A案件数の推移を追うとともに、不透明さが増す状況で重要性が高まるオルタナティブディール(少数株主としての出資やジョイントベンチャー等、従来主流であったM&Aとは異なる取引形態)に焦点を当てています。

新型コロナウイルスによりM&A案件数は急激に減少したものの、6月には通常の水準に回復

M&A市場はこれまで景気後退にともなう市場の縮小から比較的短期間で回復してきましたが、コロナ危機においても、これまでと同様の傾向が見られると考えられます。今回の調査で2007年以降の取引価額5億ドル以上のM&A案件数を調査したところ、おおむね月に40~70件の範囲で推移していることが分かりました。新型コロナウイルスの感染が急激に拡大した2020年前半も、2008~2009年の金融危機下と同じようにこの範囲を下回りましたが、6月以降は40件を超え、これまでと同じ水準に回復しています(図表)。

レポートの共著者でM&Aトピックのグローバルリーダーを務めるBCGミュンヘン・オフィスのマネージング・ディレクター&シニア・パートナー、Jens Kengelbachは次のように述べています。「6月以降のM&Aの活発化は、危機からの回復に向け、M&A市場がすでに転換したことを示唆しています。再び大規模なロックダウンとなれば回復が遅れる可能性がありますが、積極的な企業は、景気後退を、従来型M&Aやオルタナティブディールを通して戦略的な目標を追求するための魅力的な機会と見ているでしょう」

オルタナティブディールの重要性が増しているが、長期的な価値を創造できるかどうかは不透明

コロナ危機による環境の変化は、アドバンスト・アナリティクスや自動化の進展といったテクノロジーのメガトレンドを加速させました。そのため、比較的低リスクで、新しいタイプの人材や組織能力を迅速に獲得できるオルタナティブディール(少数株主としての出資、ジョイントベンチャー=JV、コーポレートベンチャーキャピタル、戦略的提携等)の重要性が増しています。2019年にJVとアライアンスの案件数が過去最高を記録し、近年、オルタナティブディールの注目度は上がってきていますが、コロナ禍によりこの傾向が強まる可能性が高いといえます。ただし、JV組成を例に分析すると、発表直後のリターンは高い傾向にある一方、1~2年後の出資者の相対TSR (注1)(株主総利回り)が業界を上回る例は半数以下であり、長期的に価値を創造できるかは不透明であることが分かりました。

「確かな価値創造のストーリーに基づいて締結されたJVやアライアンスであっても、長期的な価値創造のためには、厳格な実施、優れたガバナンス、継続的なモニタリングが必要です」と、レポートの共著者でBCGケルン・オフィスのマネージング・ディレクター&パートナーのGeorg Keienburg は述べています。

注1:Relative Total Shareholder Return: 当該企業の属する業界のセクターインデックスと比較したTSR

■ 調査レポート

「The 2020 M&A Report: Alternative Deals Gain Traction」

今回の調査は、パーダーボルン大学のSönke Sievers教授と共同で行われました。

■ 日本における担当者

加来 一郎
マネージング・ディレクター&シニア・パートナー
BCGプリンシパルインベスター&プライベートエクイティグループのアジア・パシフィック地区リーダー、およびコーポレート・ファイナンス&ストラテジーグループの日本リーダー。
慶應義塾大学経済学部卒業。住友商事株式会社、外資系コンサルティングファーム、PEファンドを経て現在に至る。

■ 本件に関するお問い合わせ

ボストン コンサルティング グループ マーケティング 直江・嶋津・福井
Tel: 03-6387-7000 / Fax: 03-6387-0333 / Mail: press.relations@bcg.com

ボストン コンサルティング グループ(BCG)

BCGは、ビジネスや社会のリーダーとともに戦略課題の解決や成長機会の実現に取り組んでいます。BCGは1963年に戦略コンサルティングのパイオニアとして創設されました。今日私たちは、クライアントとの緊密な協働を通じてすべてのステークホルダーに利益をもたらすことをめざす変革アプローチにより、組織力の向上、持続的な競争優位性構築、社会への貢献を後押ししています。

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日本では、1966年に世界第2の拠点として東京に、2003年に名古屋、2020年に大阪、京都、2022年には福岡にオフィスを設立しました。