責任あるAIとは?

責任あるAI(Responsible AI、RAI)とは、組織の目的や倫理的価値観に沿ったAIシステムを設計・運用することで、ビジネスの変革を実現するプロセスです。戦略的に導入すれば、企業はAIの活用や投資に伴う複雑な倫理的課題を解決しながら、イノベーションを加速させ、AIがもつ価値をさらに引き出すことができます。責任あるAIを実践することで、経営リーダーはAIという強力なテクノロジーを適切に管理・統制できるようになります。
55%
AI関連の過失の55%は、自社で管理していないAIツールに起因している
78%
78%の組織で、自社で管理していないAIツールの使用がみられる
20%
自社で管理していないAIツールが使用されている組織のうち20%は、こうしたツールに起因するリスクについて精査していない

BCGによる責任あるAIの導入支援

現在、「責任あるAI」という戦略的アプローチを本格的に取り入れている企業はまだ多くありません。一部の企業にとっては、構想から実行へ移すハードルが高く感じられることが、導入が進まない要因になっています。また、AIに関する規制がどのような形で整備されるのかを見極めようとして、導入を見送っている企業もあります。しかし責任あるAIの実践は、将来の規制対応だけでなく、いま現在のビジネスにも確かな価値をもたらします。

BCGの実践的なRAIフレームワークは、責任あるAIの成熟度を高めるまでの時間を最小限に抑えながら、その価値を最大化します。次の5つの柱を基盤としており、各組織の現状や文化に応じて柔軟に適用することができます。

「責任あるAI」戦略
私たちは、企業が従うべき責任あるAIの原則を明確化できるよう支援します。カギとなるのは、責任あるAIの原則を個々のクライアントの環境とミッションに合わせてカスタマイズすることです。私たちは、クライアント組織のパーパス(存在意義)とバリュー(価値観)および、直面しているリスクを検討することで、統合型アプローチほどはリスクマネジメントの程度が大きくない責任あるAIポリシーを策定します。企業がガードレールを設定する領域(およびそのレベルの高さ)を把握すれば、顧客と従業員の双方の信頼を高め、AIイノベーションを加速させることができます。
AIガバナンス
BCGの責任あるAI領域のコンサルタントは、責任あるAIプログラムを監視する仕組み、役割、エスカレーションパスを作成します。非常に重要な要素は、「責任あるAI」の諮問委員会です。この委員会は企業全体のリーダーで構成され、責任あるAIの取り組みを監視し、サポートを提供しつつ、こうしたガードレールに固有のニーズを明らかにします。 


カギとなるプロセス
私たちは、責任あるAIの実装に必要なコントロール、KPI(重要業績評価指標)、プロセス、報告メカニズムを定義します。きわめて重要なステップで、私たちは企業が責任あるAIをAI製品開発に組み込むお手伝いをします。私たちはまた、企業が継続的改善の組織能力、つまり責任あるAIの取り組みを最適化する方法を常に探求する能力を開発できるよう支援します。
テクノロジーとツール
BCG自身のパーパスの中核にイネーブルメント、すなわち人々が成功するための方法を身につけられるようにすることがあります。テクノロジーとツールはその重要な要素です。責任あるAIのイネーブラーのリストは長く、常に増大していますが、BCGのイネーブラーの中心的なものとして、コードライブラリとソフトウエアツール、チュートリアルとインタラクティブな事例集、テクニカル・プレイブック、データプラットフォーム&アーキテクチャなどがあります。
カルチャー
責任あるAIの実装は、倫理的なAI慣行を推奨し優先するカルチャーを構築することを意味します。私たちは、従業員が責任あるAIとそれに起因する課題を認識できる環境を構築し、個々人が疑問について話し問いかける権限を持っていると感じるオーナーシップを生み出せるよう支援します。生成AIの進展により前例のないAIテクノロジーへのアクセスが可能になり、カルチャー面の適正化がこれまで以上に重要になっています。

責任あるAIに関するBCGのクライアント支援事例

責任あるAIを専門とするBCGのコンサルタントは、世界各国のさまざまな業界の企業と協働し、透明性を担保しながらビジネス上の価値を生み出す最適なソリューションを構築しています。

大手年金・生命保険会社の生成AI導入支援: ある大手の年金・生命保険会社では、企業データベースを自然言語で検索できる生成AIアプリケーションを初めて開発していました。BCGはこの取り組みにおいて、「責任あるAI」に基づく包括的なガバナンスの枠組みを構築し、AIに起因するリスクのマッピングを詳細に実施。さらに、リスクと対応策を体系的に管理する仕組みを整備しました。このアプローチにより、クライアントは開発の初期段階から主要なリスクを的確に管理することが可能になりました。その結果、アプリケーションの信頼性が確保され、ユーザー体験の質が高まることで利用も促進されました。
米国大手金融サービス企業におけるAIガバナンス構築の支援: 生成AIテクノロジーの導入が急速に進むなか、BCGはこの企業の包括的なAIガバナンスの枠組みづくりを支援しました。企業の状況や戦略的目標に合わせたアプローチで、AIに起因するリスクの評価と階層化の手法を整備。明確なガバナンス体制と、利用者・開発者それぞれの役割や行動指針を策定しました。さらに、公平で倫理的な意思決定を担保するためのバイアステストの仕組みも開発しました。こうした基盤の整備により、クライアントはAIに関するリスクを的確に把握・管理できるようになり、生成AIの導入において信頼性とコンプライアンスの両立を実現しました。

責任あるAIに関するBCGのツールとソリューション

責任あるAIを専門とするBCGのコンサルタントは、各産業やテクノロジーの専門家ネットワークを活用しながら、責任あるAIの導入を支援します。構想を実践に移すため、以下の効果的なツールも活用できます。

ARTKITのご紹介

ARTKITはBCG Xが開発したオープンソースのツールキットで、新しい生成AIシステムを「レッドチーミング(脆弱性検証)」するためのものです。このツールを使うことで、データサイエンティスト、エンジニア、ビジネスリーダーは、革新的な生成AIの概念実証(PoC)から、信頼性の高いエンタープライズ規模のソリューションとして市場に展開するまでのギャップを迅速に埋めることができます。ARTKITは、人の手による検証と自動テストを組み合わせ、次の観点から新しい生成AIシステムを検証する実践的なツールを提供します。

  • 有効性: 生成AIシステムが一貫して、自社が意図する価値を生み出すことを確認します。
  • 安全性: 有害、または不適切な出力を防ぐことを確認します。
  • 公平性: サービス品質や情報源へのアクセスにおいて、公平性が保たれていることを確認します。
  • セキュリティ: 悪意ある不正利用者や攻撃者から機密データやシステムを保護できることを確認します。
  • コンプライアンス: 法規制、方針、倫理基準を遵守していることを確認します。

ARTKITを活用することで、チームは自らの批判的思考力と創造力を発揮し、潜在的なリスクを迅速に特定・軽減できます。このツールの目的は、ビジネスリーダーや意思決定者が、安全で公平な結果が得られるという確信のもとで、生成AIとBCGのRAIフレームワークの力を最大限に活用し、測定可能な形でビジネス上の成果を生み出せるようにすることです。

AIで科学の未来を拓く

BCG X AIサイエンス研究所――最先端のAI研究、学術的知見、実践的なビジネスインパクトが融合する場。
BCGのAI行動規範
BCGでは、誠実さと高い倫理観を行動の基本としています。AIの責任ある活用はその姿勢の根幹をなすものです。コンサルティング業界におけるAI活用の倫理基準を確立することを目指しており、またクライアントが経済的にも倫理的にも適切な判断を下せるようご支援しています。

AI行動規範の詳細はこちらをご覧ください。

責任あるAI 最近の論考など

AI倫理 エキスパート

BCGの「責任あるAI」領域のコンサルタントはソートリーダーであると同時にチームリーダーでもあり、クライアントと現場で協働して責任あるAIのジャーニーを加速化させます。この領域のエキスパートの一部をご紹介します。

安部 聡
Akira Abe

Managing Director & Partner
東京オフィス

豊島 一清
Kazukiyo Toyoshima

Managing Director & Partner
東京オフィス

中川 正洋
Masahiro Nakagawa

Managing Director & Partner
東京オフィス

渡辺 英徳
Eitoku Watanabe

Managing Director & Partner
東京オフィス

Michael Brent

Director, Responsible AI
Denver

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