「未来対応型企業」への道

甚大な影響を及ぼすマクロ経済の動向、テクノロジーによるディスラプション、市場ダイナミクスの変化が交錯する状況下で、繁栄する企業と衰退する企業の格差が広がっています。将来に備えた「未来対応型企業」となるためには、何が必要なのでしょうか。

短期的な業績と競争優位性の構築を両立するための基礎的条件は変化しています。中期的な株主リターンを形成する要因の60~70%を売上成長が占めていますが、従来型事業の市場では成長は頭打ちになっています。最大の好機は今、従来型事業市場の10倍速で成長するテクノロジー関連市場にあります。

こうした事業環境のなかで、多くのCEOや経営幹部が自社の将来に向けた進路を模索しています。しかし、一握りの先進的な「未来対応型企業」はこの新たな世界で成功を収めつつあり、過去5年間で9兆3,000億ドルの株主価値を生み出しています。著しい成果をあげているだけでなく、財務・非財務指標の多くでより優れたパフォーマンスを示しています(図表1)。

 

「未来対応型企業」はどのような点で、他社と一線を画しているのでしょうか。

私たちは最新の調査で、業界を問わずもっとも先進的な企業に共通する6つの属性を明らかにしました(図表2)。これらの属性は、他社を上回る業績をあげ、経済ショックやディスラプションに耐え、イノベーションを活用して価値を創造する成長を遂げるための重要な成功要因です。さらに、企業が「未来対応型」となるためにとるべきステップと、その方法を導き出しました。


経営層のための「競争優位性を構築する設計図」

企業はどうすれば、短期的な業績と持続的な競争優位性を両立できるのでしょうか。経営リーダーは、改善を年々、継続的に積み重ねていくというやり方をとる前に、まず計画的な変革を進めることが求められます。自社が構築すべき組織能力と、リターンを最大化する最善の投資策を明らかにする「設計図」が必要になります。経営アジェンダの具体的な内容は業界や各社が置かれた状況により異なりますが、未来対応型企業になるためにどの企業も共通して進むべき道筋は、明確になりつつあります。

この道のりで重要なのは、先進企業がすでに示している通り、前述した6つの属性を強化することです。この6つの属性は、企業が高成長市場に進出し、新たな機会をつかむための重要な成功要因です。

さまざまな業界の数百社に及ぶ企業を対象に実施してきた私たちの調査によると、これらの属性や重要な組織能力を構築する道のりは、いくつものステージにわたります。デジタルトランスフォーメーションの基盤づくりにも未着手のまま停滞している企業はまだ多いですが、企業の大半は着手を始め、発展途上の段階にあると言えます。これらの企業は、トランスフォーメーションによるベネフィットを一部享受しているものの、ソリューションを組織全体で推進することには課題を抱えています。少数の企業だけが組織能力を全社的に拡大展開しています。さらに、イノベーションの推進から、最終的にはディスラプションの最先端を行くまでに成長できる組織能力を構築している企業、すなわち、将来への備えができている企業はごくわずかです。